調査結果のまとめ

調査結果のまとめ

 

1 総合的にみた結果

(1)全国平均値との比較からみた結果
○総合的な体力の状況からみると、小・中学生は、ほぼ全国平均にあり、高校生(全日制)は、全国平均 を上回っている。
○男女別にみると、小・中・高校生ともに、女子の方が男子に比べやや高い。
○校種別にみると、高等学校は、すべての学年で全国平均を上回っている。特に、女子は全種目につい て全国平均を上回っている。
○種目別にみると、「長座体前屈」及び「反復横とび(敏捷性)」が、男女ともにほぼ全ての学年で全国平 均を上回っている。また、女子においては、「上体起こし」や「立ち幅跳び」、「ボール投げ」も、ほぼ全て の学年で全国平均を上回っている。
●小・中学生の50m走、小学生の握力、中学生の持久走は、男女ともに全国平均を下回る。
●小学校低学年においては、全国平均を下回る種目が多いが、学年進行とともに向上する傾向にある。
●中学生男子においては、学年進行とともに全国平均をやや下回る傾向にある。
●高等学校の定時制においては、全国平均を下回る種目が多い。

(2)昨年度の平均値との比較からみた結果
○持久走を除いて、男女とも全体的に昨年度の平均値を上回っている学年が多い。特に女子が向上傾 向にある。
○男子の「長座体前屈」と「立ち幅跳び」、女子の「長座体前屈」と「反復横とび」、「立ち幅跳び」は、一部 の学年を除いて、全て昨年度までの記録(平均値)を上回っている。
●中、高等学校の男女ともに、持久走の記録が下がっている。

(3)年次推移(S60〜H18)からみた結果
●昭和60年から平成18年までの年次推移をみると、依然として停滞もしくは低下傾向にある。特に、持 久走(全身持久力)については記録の低下が著しい。

2 校種別にみた結果

 <小学校>
(1)全国平均値との比較
○男女ともに「長座体前屈(柔軟性)」「反復横跳び(敏捷性)」については、全国平均を上回っている学年 が多い。
○男子の「20mシャトルラン(持久力)」、女子の「上体起こし(筋力)」と「立ち幅跳び(筋パワー)」「ボール 投げ(巧緻性)」については、ほぼすべての学年で全国平均を上回っている。
●男女ともに「握力(筋力)」と「50m走(スピード)」、男子の「上体起こし(筋力)」について、すべての学年 で全国平均を下回っている。

(2)昨年度の平均値との比較
○男女ともに「長座体前屈(柔軟性)」と「立ち幅跳び(筋パワー)」、男子の「上体起こし(筋力)」、女子の「 反復横跳び(敏捷性)」は、ほぼ全ての学年で昨年度の記録を上回っている。
●男女ともに「握力(筋力)」「ボール投げ(巧緻性)」は、昨年度の記録を下回っている学年が多い。

(3)過去5年間の推移
○上昇傾向にある項目
・「長座体前屈(柔軟性)」(低学年男女・高学年男女)
・「立ち幅とび(筋パワー)」(高学年男子)
●低下傾向にある項目
・「握力(筋力)」(高学年女子)
・「反復横跳び(敏捷性)」(高学年女子)
・「50m走(スピード)」(低学年男子)

<中学校>
(1)全国平均値との比較
○男子の「長座体前屈(柔軟性)」「反復横跳び(敏捷性)」、女子の「握力」「上体起こし」「長座体前屈」「反 復横跳び」「立ち幅跳び」「ボール投げ」については、すべての学年で全国平均を上回っているか、ほぼ 同程度に達している。
●男女ともに「持久走」、男子の「50m走」、女子の「20mシャトルラン」は、全学年で全国平均を下回って いる。

(2)昨年度の平均値との比較
○男女ともに、「握力」と「長座体前屈(柔軟性)」、「50m走」については、全学年で昨年度より記録が上回 っている。 
○男子においては、「立ち幅跳び」が全学年で昨年度より記録が上回っている。
●男女ともに「20mシャトルラン」については低下傾向にある。

(3)過去5年間の推移
○上昇傾向にある項目
・「長座体前屈(柔軟性)」(男女)
●低下傾向にある項目
・「上体起こし」(男子)
・「持久走」(男女)

<高等学校>
(1)全国平均値との比較
○男女ともに、全学年総合平均が全国平均を上回っているか、同程度に達している。
○女子は全学年全種目において、全国平均を上回っている。
○男子は「上体起こし」「長座体前屈」「反復横跳び」「立ち幅跳び」「ボール投げ」について、全国平均を上回っている。
●男子の「持久走」「20mシャトルラン(全身持久力)」が、全国平均を下回る学年が多い。
●定時制は、学年進行とともに向上する傾向にある。

(2)昨年度の平均値との比較
○男女ともに「反復横跳び」、男子の「ボール投げ」、女子の「握力」「上体起こし」「長座体前屈」「反復横跳 び」「20mシャトルラン」「50m走」については、ほぼ全学年で昨年度の記録を上回っている。
○定時制の男女(4年生)については、男子の「立ち幅跳び」を除いて、全て記録が向上している。
●男女ともに「持久走」の記録が昨年を下回っている。

(3)過去5年間の推移
○上昇傾向にある項目
・「握力(筋力)」(女子)
・「上体起こし(筋パワー)」(女子)
・「反復横跳び(敏捷性)」(女子)

 

3 本県児童生徒の体力の特徴と指導の方向(考察)

(1)小学生の段階から「敏捷性」や「柔軟性」に優れ、素早く動くことができる児童生徒が多い。小学生は  この時期に特に高めたい「体の柔らかさや巧みな動き」を身に付けていると判断できる。

(2)学年が進むにつれて「筋力」「筋持久力」「筋パワー」が身に付き、発達段階に応じて体力が向上して  いる。中学校では「持久的な動き」、高等学校では「力強さとスピードのある動き」を重点とする運動の  取り上げ方や指導を継続しつつ、児童生徒の体力状況に応じた年間指導計画の工夫や各運動種目  と体力要素の関連をとらえた運動実践の改善が必要である。

(3)小・中学生の段階では、女子の方が体力的に優れている。全国平均と比べて、小学生(特に男子)の  体力の低下が見られるが、学年進行とともに体力が高まる傾向にある。小学校において、学校の教育  活動全体を通して体育的活動を推進している成果の兆しが見られるが、50m走の記録から「走運動」  を充実させる必要がある。

(4)高校生では、体力の向上が顕著になり、全国平均以上に位置するといえる。特に、女子の記録の向  上が顕著である。小学生段階から高かった柔軟性や敏捷性は、高校で一層伸びていると言える。運  動部活動等の充実を含め、積極的な運動実践の成果ととらえることができる。

 

参考<テスト項目と体力評価>

テスト項目

体力評価

テスト項目

体力評価

握力

筋力

シャトルラン

または持久走

全身持久力

上体起こし

筋力・筋持久力

50m走

スピード・走能力

長座体前屈

柔軟性

立ち幅とび

筋パワー・跳能力

反復横とび

敏捷性

ボール投げ

筋パワー・投能力・巧緻性

 

結果の活用

 

1 標準偏差(SD)
標準偏差とは、データから平均値を基準にして、集団の散らばり具合を示す度合いである。標準偏差が大きい場合は、その集団の散らばりが大きく異質集団であるといえる。その反対に標準偏差が小さい場合は、集団の散らばりが小さく等質集団であるといえる。

2 Tスコア
個人の記録を比較し、集団の中で相対的な位置を知ろうとする場合、異種目の比較や同一種目であっても異単位な場合の比較が可能な方法が必要である。その代表的な方法がTスコアである。
Tスコアは、集団の平均を50点にし、そこから標準偏差の1倍離れたものを40点と60点に、2倍離れたものを30点と70点に換算した数値である。
※計算の仕方
Tスコアは、個々の測定値(X)、平均値(M)、標準偏差(SD)を使って、次の公式で求めることができる。

Tスコア=( XーM )/S D×10+50

なお、50m走や持久走のように、数値が小さいものほど記録がよいものについては、計算の際に(M−X)として計算する。
また、平均値と標準偏差は、全国の値、県の値、学校の値、クラスの値、個人の値など使い分けることができる。
学校や個人の実態に応じて活用を願う。

 

今後の取組み

 

【健康教育の充実】 運動に親しみ、進んで健康な生活を送る態度を育てる

 

1 教科体育はもとより、日常生活における運動実践の場を充実させる
・生涯スポーツの基礎づくりと体力の向上を目指し、学校・家庭・地域社会における体育的実践を通して、自ら進んで運動を実践する習慣を身に付けることができるようにする。
・小学校では、多様な運動経験を大切にし、教科体育や体育的行事等との関連を図った日常的な運動実践の場を充実する。
・中学校や高等学校では、上記小学校の項目に加え、運動部活動へも意欲的に参加できるようにし、活動に充実感がもてるよう、運営方法や指導方法について工夫する。

2 運動に親しむ資質や能力を育て、体力の向上を図る
・運動の特性を踏まえ、児童生徒が運動技能を身に付け、仲間と一緒に運動する楽しさや喜びを味わうことができるようにする。
・発達段階に即した適切な運動の機会を計画的・継続的に位置付け、体力の向上を図るようにする。