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スポーツ医科学(突き指〜腱断裂伴う場合も〜)

船橋 建司(多治見市民病院)

  突き指はあらゆるスポーツにおいて、よくみられる外傷です。野球、バレーボール、バスケットボールなど、手でボールを扱うスポーツ全般に発生します。指の機能は重要ですから、たかが突き指とあなどらないで、競技者、指導者ともにその傷害の詳細をよく知っておく必要があります。
 突き指とは、指にいろんな方向から強い力が加わって、指の関節が傷つくものです。骨折、靭帯損傷や腱断裂を合併することが少なくありません。指を突いたからといって指が短くなるものではありませんが、脱臼や骨折をした時には短くなったように見えます。単に突き指をしただけの時に、力一杯指を引っ張って治そうとしないでください。
 指には3つの関節があります。指先の関節(DIP関節)、真中の関節(PIP関節)、付け根の関節(MP関節)の3つで、部位により診断や治療法が異なるため、部位ごとに説明します。
 DIP関節の損傷は、指先にボールが当たって起こることが普通です。この時、指先が曲がって伸びなくなってしまうことがあります。これは、指を伸ばす腱が切れたためです。骨折を合併していることも多く、正しく治療しないと指先は曲がったままとなります。指(DIP関節)を伸ばした状態に固定して、腱や骨折が治るのを待ちます。手術で腱をつなぐこともあります。
 PIP関節の損傷では、脱臼や靭帯が切れていることが多く、機能傷害を残しやすいので、注意しなければなりません。大したことが無いとほっておくことは危険です。指が横に向いてしまったときには脱臼ですから、整復だけでなく固定が必要です。靭帯が切れた時には、しっかり固定しないと弛んだ指になって、痛みと不安定感が残ります。
 MP関節の損傷は親指(母指)に多く見られます。ボールが当たったり、スキーでストックを握ったまま手をついて転んだ時によく起こります。母指の内側の靭帯が傷ついて、ほっておくと物をつかむ力が低下します。
 そのほかに、母指に強い力が加わった時には、指の付け根よりさらに手関節に近い関節(CM関節)を傷めることがあります。母指を大きく広げたり、強く握ると痛みます。骨折していることが多く、手術を必要とすることが少なくありません。突き指とはいえ、その病態は一様ではありません。指の曲がりが悪い時には早期の固定が大切ですし、骨折、脱臼、靭帯損傷の可能性がありますので、専門医での正しい診断と治療が重要です。