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スポーツ医科学レポート

スポーツの腰痛に坐骨神経のストレッチを
野口 耕司(岐阜市民病院 整形外科)

 スポーツマンに腰痛は付き物と思われています。事実スポーツ障害の実に半分以上が腰痛に関連したトラブルで悩んでいます。ほとんどのスポーツ活動は腰背部の筋肉と腰の骨で支える全身運動を行なうわけですから筋肉は訓練で発達し強くなり、骨もその密度が増加し強くなります。しかし靭帯と軟骨から構成される椎間板は訓練で強くすることはできません。反対に激しく使えば椎間板の重要な構造である線維輪に断裂が起こり、あるいは椎間板と軟骨との間にある終板と言う軟骨の剥離が起こってきます。この様なことがスポーツマンの腰痛の原因のほとんどと考えられています。
 しかし腰痛の大部分はしばらくスポーツ活動を減らすか休めば自然に良くなり、1〜2週間の内に再び元のスポーツが可能になります。こんな事は多くのスポーツマンが先刻ご承知ですので腰痛が起きると腰を屈めて歩き、湿布を貼って痛みが去るのを待ちます。しかし時には3日経っても1週間経っても痛みが消えず、むしろ強くなったり下肢の裏側に痛みやシビレを感ずるようになると、やや心配となり腰痛の治療に出かけます。腰痛を飯の種にしているところは整形外科医、外科医、柔道整復師、鍼灸師、マッサージ師、整体、カイロプラクティークです。最後の二つは無資格で営業が可能な職種です。
 何れにしても腰痛から重大な状態に陥ることはほんの一部の場合に限られ、大部分の腰痛では何とか日常生活はできるとか、仕事はできるがゴルフはだめとか、授業は支障無いが部活はできないとか、その反対がとかがあるわけであり、いずれ何も手当てをしなくても痛みは取れてくるものです。
 医療機関ではマイクロウェーブ等の機械を使って患部を暖め、腰椎の牽引を行い、マッサージをし、鎮痛薬を処方し、コルセットを付けることを勧めます。民間医療では指圧、鍼灸、マニプレーション、整体、マッサージなどで、その他私の知らない方法がまだあるかもしれません。いずれも痛みを和らげながら良くなるのを待つ方法です。たいていどちらをとっても大きな違いはありません。多くの医療機関ではレントゲンを取るため骨腫瘍等の重大な病気を見つけることはできますが、そう滅多にあることではありません。その他痛みを和らげる薬が貰えますし保険が効きますので安く済みます。でも昨年の医療費の改定からやや高くはなりました。民間医療では時間をかけて手を加えて治療をしますので筋肉の凝りを揉みほぐしたり指圧を加えたりして良い気持ちにさせてくれます。多くの場合保険が効かないためにコストがかかること、高いお金を払って来ていただくわけですから治療側も真剣で一生懸命サービスすることなどが異なります。ときには腰痛のメカニズムや治療原理を知らない施術師にかかると無理な体位を強制されて症状が悪化したり、極端な場合には下肢が麻痺することもあります。一度治った痛みがスポーツ活動の積み重ねでくり返した後には椎間板の損傷は椎間板ヘルニアとなり、そう簡単には治りにくくなってきます。それでも当初ヘルニアは靭帯に包まれたまま神経根を圧迫しますので短期間の我慢で痛みは減っていき、治ることができます。疾痛発作をくり返すとヘルニアが靭帯を破って直接神経根を圧迫します。すると下肢のシビレ、放散痛が取れなくなります。
 300例以上の椎間板ヘルニアの手術経験から、手術に至るような慢性の強い腰痛や下肢痛のほとんどは硬膜管から分かれた神経根がその分岐部で椎間板の圧迫や癒着によって固定された状態になっていました。走ったり腰を使った運動をすることでさらに強い圧迫が加わったり引っ張られたりして神経根が腫れあがり痛むことがわかりました。ゆとりのある神経根を持っていれば少々ヘルニアができてもその圧迫を柳に風と受け流すことができます。日頃から神経根にゆとりを持たせる訓練が慢性腰痛の予防と治療に重要なことかと思い至りました。それには神経根と繋がった坐骨神経の伸展訓練を日頃から行なうことです。立って両手を床に着ける訓練は慢性腰痛持ちには椎間板の内圧を高め痛みを増強します。坐骨神経ストレッチは仰臥位で両手で片方の大腿部を体に向かって引き寄せます。こうすると骨盤は前方に回転し、それに伴って腰椎の前湾が減少します。腰椎の後湾は椎間板の後方で内圧を減少させます。するとヘルニアの膨隆が減り神経根を圧迫することも減少します。股関節を強く屈曲しておいて膝を自分の力で伸展するとハムストリングスと同時に坐骨神経も伸展されます。これをくり返します。朝夕それぞれの脚に10回ずつ繰り返せばよいでしょう。ここで痛みを一生懸命我慢してまで行なってはなりません。そんなことをすれば逆に腰痛を悪化させること請け合いです。坐骨神経のストレッチが困難なほど痛みが強いときには膝や股関節を大きく使いながらゆっくり歩くことです。水中歩行も効果的です。この場合膝を高く上げて歩くとよろしいでしょう。ゆっくりとしたストレッチ効果が現れます。腰にゆっくりした捻りを加えることも神経根のストレッチ効果があります。日頃のトレーニングの中に坐骨神経ストレッチングを取り入れて下さい。タイムセービングでマネーセービングな腰痛の予防と治療が簡単にできます。

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