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スポーツ医科学レポート

スポーツの発展と社会
原田 憲一(岐阜大学 教育学部)

1.スポーツは大きな文化である
   心身二元論の考えのもとに精神的なものは文化であり、肉体は卑しいものとされ、スポーツは文化とは異質なもので、文化的に低くみなされてきました。
 現在では、文化とは生存を可能にするばかりでなくそれを豊かにし、洗練し、生活を質的に高め、存在を一層意義深いものにする工夫の総体であるとされています。現代社会においてスポーツの存在は欠くことのできないくらい大きな文化になっています。
 スポーツは、消費社会の経済における大きな目玉商品として存在しています。それはスポーツそのものだけでなく、スポーツを取り巻く周辺産業を見れば、その大きさが理解されます。スポーツ選手のプロ化だけでなく、見せ物としてのスポーツイベントでは、会場、交通、宿泊、飲食、整備等、経済波及は絶大です。スポーツを行なう人にとってもスポーツ用品だけでなく、観戦の場合と同様に大きな経済波及効果を及ぼしています。またスポーツはテレビや新聞雑誌などのマスコミによる報道だけでなく、それに基づくフィクションや広報にまで用いられています。
 行政からは、経済波及効果だけを狙っているのではなく、町や国の活性化を図って、スポーツでのイメージアップをはかり、その存在を主張します。スポーツは帰属意識を高めることから、希薄になった人間関係を取り戻すための町づくりとして利用されています。個人においては、健康を保持増進する最もよい方法として、或いは美しい身体のためにスポーツが良いとすすめられています。また、若者はスポーツに、身体への憧れや活力や力強さの象徴としてだけでなく、何よりもかっこ良さとして、魅力に感じています。若者だけでなく、全ての年代で共有できる話題としてスポーツの存在があります。つまり現代社会においては、社会の枠組みにおいても、個人の日常生活においても、なくてはならないほど大きな文化となってきています。
2.スポーツは社会的な存在である
   スポーツはそれ自身の内部においても、社会的な側面があり、社会的な行為であり、システムをもっていますが、外部との関係、つまりスポーツを取り巻く社会との関係で、スポーツがどのような構造をもっているのかを見てみます。
 スポーツは一定の自立性を持ちながら、それを取り巻く全体社会とお互いに影響し合っています。全体社会は歴史的・社会的な構造によって規定された特定の社会体制をもち、政治・経済・科学・教育の力を通じて、スポーツに意図的、非意図的に、また直接的、間接的に影響を与え、影響されています。意図的なものをスポーツ政策・戦略と呼び、非意図的なものを感化と呼んでいます。
 個人の側から見ると、全体社会の社会体制の中で生活を営んでいますが、その生活を背景にしてさまざまな欲求や必要性や問題を持っています。その充足や解決をスポーツに向けるとき、そこにスポーツ要求が生じ、それを通じて様々なスポーツと具体的に結びつくのです。このスポーツ要求とスポーツ政策・戦略の全体的なまとまりをスポーツ需要と呼んでいます。これは固定的なものではなく変化するもので、スポーツもスポーツ需要との対応において変化していくのです。
3.スポーツの発展は社会との関係できまる
   スポーツの内部つまりスポーツシステムや技術の改善、また実践する人の身体の適性、その方法など、よりよいものを見つけだし整理していかねばなりません。その一方で、全体社会との関係から、現実の社会の反映としてどのようなスポーツ政策が生じるのか、またどのようなスポーツ要求が生じているのかを整理し、スポーツ需要に応じたスポーツの在り方を確かめていかねば、定着したスポーツになりえません。もっともスポーツの存在からそれに感化された社会の変容もあり得るので、常に両方向から探求していかねばならないことであります。
 例えば、子どもたちのスポーツ活動はどうか。それはスポーツそのものを吟味するだけでなく、学校でのスポーツの取り組み方、学校教育全体との関係、教育の考え方や社会に対する学校の役割によって決定されます。また学校外での生活や期待されている人間像といったものは、子どもたちの遊びだけでなく、進路や就職、大人になってからの生活や社会的役割等といった現実社会との関係から生じてきます。これらのことは子どもだけでなく親や社会の意図が常に覆い被さっているということです。現実のこどもの生活のなかから、どのような欲求が生じているのか、それをスポーツに向けさせスポーツをやりたいという状況をどのようにして生み出すのか。政策としてだけでなく、感化するような状況はどのようにして生まれるのか。それをどのようにして保障していくのか。スポーツそのものだけでなく、スポーツを取り巻く周りからも整備していく必要があります。生活に密着したスポーツの発展を考えていくことは、現実の全体社会の変容と発展を意図することになりそうです。

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