トップ>スポーツ医科学レポートトップ

<編集・発行>
(財)岐阜県体育協会
スポーツ医科学委員会
岐阜市長良福光大野2675-28[岐阜メモリアルセンター内]
TEL 058-297-2567
FAX 058-297-2568

スポーツ医科学レポート

スポーツ飲料の利用効果
林 美穂子(松波総合病院 管理栄養士)

 運動の前後や最中には何を飲んだら良いのかよく聞かれます。お茶、ジュース類、スポーツ飲料など種類やまた摂るタイミングは、選手やチームで実に様々なようです。最近では水分補給だけではなくより効果的な栄養補給を目的とした様々なスポーツ飲料が市場に出回っています。これらのスポーツ飲料は各製造会社や競技団体によって独自に検討し開発されており、その成分や含有率には若干の差がありますが基本的には数%程度の糖質と電解質が含まれた飲物と言えます。
●電解質補給の意義
   まず運動時の水分摂取の必要性を考えてみます。運動の筋肉活動によって身体の発熱量が増加し、また夏など外部の環境温度が高い場合はさらに外部からの熱を受けます。この熱を下げる為に体は、1)皮膚に流れる血液量を増やして体熱を体表面から外部環境へ放散したり、2)汗をかく事で体熱をその水分と一緒に外気に蒸発させています。よって特に発汗の激しい運動時の水分補給は、脱水や熱中症さらには循環血液量の減少に伴う心拍出量の低下による競技力の低下の予防に大変重要です。
 ところでこの汗には水分だけでなく「塩分」「尿素」「乳酸」「アンモニア」「アミノ酸」など、様々な“電解質等”が含まれています。通常、汗によって失われるこのような電解質はその後の食事で充分補充出来る範囲の量ですが、暑い炎天下(高温・多湿)や長時間の練習などで多量に汗をかくような場合には、運動前後や最中に電解質入りのドリンク類いわゆるスポーツ飲料などでこれを補う事は疲労の遅延や回復の促進に有効です。一般に汗が2リットル以上となると電解質の補給が必ず必要とされています。またすでに大量の発汗をした後では、電解質のうち特にナトリウムの摂取(塩分)が同時にないと、水分だけの補充では体液の電解質バランスの回復は望めないとも言われます。脱水状態で一気に多最の水分を摂取するとかえって組織内外の電解質バランスを崩すことになるからです。これは場合によっては筋肉の硬直や痙攣を起こす可能性もでてきます。一般にひどく汗をかいた後の“水のがぶ飲み”は不快感や胃の膨満感を伴う事を体験している事と思います。
 体内の水分欠乏を「喉の渇き」として認識するには時間的な遅れがあります。口渇感を覚えてから補給するのでは回復への立ち上がりに時間がかかる事になります。少量ずつ頻回に摂取する事が勧められます。
もっとも通常必要とされるこれらの電解質の量は微量ですし、電解質はたいていの食品に含まれていますから特に新鮮な食品を用いた食事を日常の食事で心がけていれば不足するようなことはまずありません。しかし、特に厳しい減量などの体重コントロールをしている場合などは、普段からの供給が十分でない事も考えられますから注意が必要です。
●糖質補給の意義
   またスポーツ飲料には若干の糖質も含まれています。少量の等(10%以下)が体内への水分吸収を助けるという効果を加味したものと考えられます。糖質は運動時の最も重要なエネルギー源ですから、特に持久力を必要とする競技分野においては、競技パフォーマンスの低下を起こさせないよう運動中にいかにこの糖質を補給するかが多彩に研究がされています。しかしこのように水分補給だけの意味ではなく、栄養補給を目的とした糖質溶液の摂取は、糖分の種類や濃度、摂るタイミングや量に十分配慮しなければ効果はなく、かえってマイナス要因となる事もあります。現在のところ高糖質液が水や低糖質液よりも有効であるという事を明確にしたデータの報告はなく、必ずしも一致した見解は得られていません。なぜなら食物の消化、吸収は食物の形態や含有する栄養素によっても個人の状態によってもかなり左右されます。行う競技の種類や継続時間を十分考慮する必要もあります。さらには目的や環境状況によって摂取方法、内容は当然変化しますし、するべきものと言えます。つまり競技種目や選手の個別性を加味した管理が必要なのです。
●運動強度と水分補給の目安
   結論として日常の練習程度であって単に水分補給の目的の場合は、過度に甘いジュース類(糖度の高い物は胃の停滞時間を長くするようです)や炭酸入りのような飲みにくい物、一度に大量に飲むというような事さえ除けば、(1日の量は少なく液体の温度は低いほうが早く吸収されます)どれもさほど問題にはなりません。しかし2時間以上の持久運動の場合には、単なる水よりもスポーツ飲料(好みの物で良いでしょう。各社ともあまり大差はないようです)が薦められます。日本体育協会では次の目安を出していますので参考にして下さい。運動中は胃・小腸などの消化器官の運動や消化液、酵素の分泌は抑制されます。運動中の水分補給は不足はもちろんですが、過剰の摂取も運動時の体温調整を悪くするだけでなく、競技能力の低下やその後の食事の消化吸収能力の低下につながります。個人差も大きいので様子をみながら行ってください。
運 動 強 度 水分摂取の目安
運動の種類 運動強度 持続時間 競技前 競技中
トラック競技、バスケット、サッカーなど 75〜100% 1時間以内 250〜500ml 500〜1,000ml
マラソン、野球など 50%〜90% 1〜3時間 250〜500ml 500〜1,000ml/
1時間ごと
ウルトラマラソン、トライアスロンなど 30〜70% 3時間以上 250〜500ml 500〜1,000ml/
1時間ごと
必ず塩分を補給
  1. 温度条件によって変化するが、発汗により体重減少の70〜80%の補給を目安とする。
気温の特に高い場合には15〜30分ごとに飲水休憩をとることによって、体温の上昇がいくぶん抑えられる。
2. 水温は5〜15度が望ましい。
3. 組成はまず口当たりがよく飲みやすいものとする。それには、0.2%程度の食塩と5%程度の糖分を含んだものが適当である。

Copyright(C) 1997 SPORTS GIFU
more information & question
spojo@gifuspo.or.jp