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スポーツ医科学レポート

スポーツ疲労
木田 公洋(長良整形外科病院)

 スポーツ疲労といってもその要因は多種多様であり個人差も大きく“疲労”の絶対的指標は現在の所、見い出す事ができません。しかしながら、スポーツ競技者にとってスポーツ疲労は避けて通る事のできないものです。今回、スポーツ疲労をあえて「筋肉疲労」と「精神疲労」に分類して述べます。
 筋肉疲労はスポーツにおいて“悪”と考えられがちですが、スポーツ競技者にとっては大変重要なものです。第一に筋肉疲労はオーバートレーニング(使い過ぎ症候群)の警鐘、目安となるスポーツ障害予防の大切な反応といえます。第二にスポーツトレーニング効果を得るためには筋肉疲労が必要条件となります。
 スポーツトレーニング効果とオーバートレーニングの関係は図1で説明されます。T期で行うスポーツ活動により、骨格筋に乳酸などの疲労物質が蓄積して活動能力は低下します。U期で休息をとる事により疲労が回復し、活動能力も上昇してゆき、V期で“超回復”と呼ばれる、トレーニングを開始する時点の基準より活動能力が上昇する現象がみられます。これがスポーツトレーニング効果です。更にそのまま休息を続けるとW期では活動能力は基線を中心に上下に変動しながら、最終的にはトレーニング開始時の体力水準に戻ってしまいます。
 休息をどれだけとるか、言い換えれば、いつトレーニングを再開するかが重要なポイントになります。U期にトレーニング再開を続けていると活動能力は低下してしまい、トレーニング効果が得られないばかりかオーバートレーニングとなり、スポーツ障害も出現します。V期にトレーニング再開を続けていると活動能力は上昇してゆきます。超回復現象をうまく利用した事になります。W期にトレーニングを行うのは、一般人のいわゆる趣味程度のスポーツがこれに相当します。
 オーバートレーニングの予防としては環境の整備が挙げられます。施設や設備の安全性のチェック、温度、湿度、照明、換気などのほか、服装、靴などの配慮も必要です。選手本人の自己管理の重要性は言う迄もありません。無意味なダイエットなどもっての外で、バランスのとれた食事、適正な睡眠、規則正しい生活などに注意しましょう。
 ところで、骨格筋に蓄積した疲労物質の除去のためには、その運搬役である静脈の血流をスムーズに行わせる必要があります。血液は御存知のように、心臓→動脈→末梢の毛細血管→静脈→心臓→肺、と循環しています。動脈は心臓という強力なポンプを持っています。しかし、静脈は心臓の力が関与しにくくなっています。そのため静脈は図4のように血管内に弁を持っており、血液の逆流を防いでいます。しかし、これだけでは静脈に十分な血流は得られません。図5のように血管をつぶす事により静脈内の血液は弁の開いた方向へ押し出されます。図6のように血管を広げてやるとBの方向から静脈内に血液が入り込んできます。すなわち静脈は、づぶされたり広げられたりして血流が十分に得られ疲労物質を運び出しています。この静脈をつぶす、広げる役割を筋肉が担っているのです。動脈の血流原動力が心臓なら、静脈血流の原動力は筋肉といっても過言ではないでしょう。だからこそ、スポーツ後においては整理体操などの軽い運動やジョギングのように体、すなわち筋肉を動かしてやる事が、疲労回復にとって大変重要となります。
 精神疲労もスポーツ活動を行なう上で問題となります。スポーツで全力を出しきる前に肉体疲労を来してしまうケースがみられます。それは、オーバートレーニングの場合が多いようですが、意外と精神疲労も関与している事があります。精神疲労によりホルモン分泌のバランスがくずれ、筋肉疲労の回復を妨げるのです。精神疲労はスポーツ能力の伸び悩み、スポーツに対する情熱の低下などの他、指導者の何げない一言や態度が引き金になる場合もあります。罰としてスポーツもスポーツ嫌い、ひいては精神疲労の誘因となり得ます。
 スポーツ活動は当然の事ながら時として苦しいものです。元気な言葉のかけ合いなど明るい前向きの姿勢が重要です。練習は思いっきりやりましょう。そして、練習後は「また頑張るぞ」という気分になれる、さわやかな雰囲気のなかで帰宅したいものです。
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