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スポーツ医科学レポート

水分補給でベストコンディションを
蘭 和真(東海女子大学文学部)

1.水分補給はコンディションづくりの第一歩
   運動をすると汗をかきます。これは筋肉の活動によって発生したエネルギーで体温が上昇するのを抑えるためです。この汗による水分喪失は私たちの競技成績に影響を与えます。体重の約3%の水分喪失で運動能力はいちじるしく低下をはじめると考えられています。試合や練習で汗を大量にかけば競技力は確実に低下するということです。さらに発汗が続くと生命に危険が及ぶ可能性のあります。しかし、ひと昔前までは練習中に水分を摂る事は多くの場合禁止されていました。色々なことが理由としてあげられていましたが、結局は練習をいわゆる修行としてとらえ、辛抱することによって精神を鍛えることが重視された結果のものではないかと考えられます。今日、練習中の水断ちを行っているところはほとんどないと思います。むしろ、色々な研究の成果から積極的に水分補給を考えているところが多いのではないかと思います。しかし、練習中だけではなく、練習後や日常生活の中での水分の摂り方をコンディションづくりの一環として心がけている選手は少ないのではないかと思います。水分をいかに補給するかということは食事をいかに摂るかと同様に重要なことであると考えられます。
 水分補給を考えるとき、自分が練習中にどのくらいの汗をかいているのかを意識することも重要なことです。そこで、皆さんにも自分の汗の量を測定してもらいたいと考え、一例としてバドミントンの練習中の発汗量を紹介します。
2.練習中の発汗量(バドミントンの場合)
   表1は著者の専門種目であるバドミントンの合宿練習中にどのくらいの発汗がみられるのか調査した結果です。調査は5泊6日の日程で、1回3時間、計10回行われた東海女子大学の春季合宿練習中に実施されました。発汗量は、練習開始直前に乾いた下着、短パン、Tシャツのみを着用し、50g単位で測定できるデジタル台はかりで体重を測定し、練習直後に全身にかいた汗等を十分に拭いた後、練習前に測定したときと同じ重量の下着、短パン、Tシャツに着替え、体重の測定を行い、練習前後の体重の差に練習中に摂取した水分重量を加えることにより算出しました。練習中の室温は11〜7℃と肌寒い状況にも関わらず2000g以上の発汗がみられた例や体重の3%以上の発汗がみられた例があったこと、また、個人差が大きかったことなどが注目されました。
3.著者の経験から
   著者は昭和62年の沖縄国体バドミントン競技成年の部で優勝したことがありますが、その時にはコンディションをベストに保つため、水分補給の方法に神経を使ったことを記憶しています。沖縄は南国です。また、バドミントンは風と太陽光線の関係から窓と暗幕を閉めて行う暑い競技です。さらに、競技中はルールにより水分補給ができません。技術、作戦以上にコンディショニングが勝敗を左右します。大会期間中は移動中の車の中でも、ウォーミングアップの最中でも、試合と試合の間でもミネラルウォーターを入れたペットボトルを手放さずこまめに補給しました。また、寝る前にも枕元にペットボトルを置いて目覚めたときにすぐに飲めるようにしておきました。こまめな水分補給のおかげでベストコンディションを最後まで維持できたと信じています。
4.おわりに
   私たちの身の回りには水分補給の方法について色々な情報が満ちあふれていますので、今回のレポートでは詳しい方法については他書に譲ることにします。ただし、水分補給の方法についてひとついえることは、色々な情報を参考にしながら、自分にあった方法を試行錯誤しながら見つけることが大切であるということです。発汗量にしても個人差が大きく、競技によっても補給方法が違ってくるからです。選手一人ひとりが、練習中はもちろんのこと、水分補給を総合的なコンディションづくりのためのものであると意識することこそが重要でしょう。

表1.バドミントン練習中の発汗量(蘭 未発表資料)
被験者 3月26日午後
発汗量
(対体重比)
3月27日午前
発汗量
(対体重比)
3月27日午後
発汗量
(対体重比)
3月28日午前
発汗量
(対体重比)
3月28日午後
発汗量
(対体重比)
1040(1.7) 1030(1.7) 1000(1.6) 1120(1.8) 760(1.2)
1240(2.5) 1000(2.0) 1360(2.8) 1260(2.6) 950(1.9)
1490(2.8) 1560(2.9) 1680(3.2) 1050(2.0) 980(1.8)
2030(3.3) 2180(3.5) 1520(2.5) 1780(2.9) 950(1.5)
1300(2.2) 1180(2.0) 1540(2.6) 1000(1.7) 890(1.5)
1520(2.5) 1800(3.0) 750(1.2) 1230(2.0) 930(1.5)
平均値 1437(2.5) 1458(2.5) 1308(2.3) 1240(2.2) 910(1.6)
標準偏差 310(0.5) 432(0.7) 328(0.7) 258(0.4) 72(0.2)

被験者 3月29日午前
発汗量
(対体重比)
3月29日午後
発汗量
(対体重比)
3月30日午前
発汗量
(対体重比)
3月30日午後
発汗量
(対体重比)
3月31日午前
発汗量
(対体重比)
1110(1.8) 1170(1.9) 800(1.3) 1170(1.9) 720(1.2)
570(1.2) 550(1.1) 530(1.1) 500(1.0) 380(0.8)
1210(2.3) 830(1.6) 1120(2.1) 1120(2.1) 400(0.8)
1460(2.4) 1320(2.1) 1100(1.8) 900(1.5) 930(1.5)
830(1.4) 1380(2.3) 1420(2.4) 2000(3.4) 1200(2.0)
1320(2.2) 2020(3.3) 2060(3.4) 1770(2.9) 490(0.8)
平均値 1083(1.9) 1212(2.1) 1172(2.0) 1243(2.1) 687(1.2)
標準偏差 301(0.5) 462(0.7) 485(0.8) 507(0.8) 300(0.5)

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