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スポーツ医科学レポート

体力トレーニングの条件
 
川口純子(スポーツ科学トレーニングセンター)

 健康のために行っているスポーツでも、競技成績を高めるために行っているスポーツでも、体力トレーニングを行っていると、いずれはその効果(トレーニング効果)が現れます。これは、選手や指導者を含め、トレーニングを実施する人であれば多くの人が理解しているところです。ただし、この効果は、トレーニングを行う人に、適切なトレーニング内容が実施されて初めて期待できるものです。
 ここでは、トレーニングの原理や原則に従って、効果を出すためのトレーニング条件について説明します(トレーニングの原理と原則については、スポーツ医科学レポートNO.2「体力トレーニングの必要性」を参照下さい)。
 トレーニング効果は、トレーニングを実施すれば現れるものですが、もしも間違ったトレーニングや適切でないトレーニングを進めていると、目的にあった効果がでるどころかスポーツ障害を引き起こすことになります。そこで、正しくトレーニングを進め、期待通りの効果を生み出すための条件を図1に示しました。図からもわかるようにトレーニングの条件はいくつかあげられます。これらの条件をそれぞれ説明します。
 
○トレーニング強度
   トレーニング効果は、身体に一定以上の負荷(強度)を与えることで生まれます。トレーニング強度は、この一定以上の負荷(強度)のことです。トレーニング強度はトレーニングの目的によってその基準や決め方は異なりますが、一般的には、生理学的強度、物理学的強度、主観的強度で決めることが多いようです。
 レジスタンストレーニング(一般的には、筋力トレーニングやウェイとトレーニングのことです)では、最大筋力(1回だけ挙上できる重量:1RM)の40%から80%を目安に行います。体力に自身のない人やこれから筋力トレーニングを始めようとする人は、1RMの40%から50%程度の比較的軽い負荷から始めましょう。また、体力レベルの高い人やトップレベルの競技選手には、1RMの80%程度でも足りないときがありますが、この時はさらに高い強度でのトレーニングが必要です(詳しくは、スポーツ医科学レポートNO1「筋肉づくりと筋力・パワーづくり」を参照下さい)。
 全身持久力のトレーニング、つまりスタミナのトレーニングは、最大酸素摂取量を基準に決めます。しかし、実際には自分の最大酸素摂取量を知ろうとすると特別な施設に行って、大掛かりな機器を使って調べることになり、特別な競技選手でもなければ困難です。一般的には、酸素摂取量と相関の高い心拍数や主観的運動強度(RPE)を使って持久的なトレーニングの強度を決めます。そこで、次に、全身持久力のトレーニング強度を心拍数から求めてみましょう。全身持久力の心拍数を求める方法はいくつかありますが、ここでは、カルボーネンの式を使って求めることにします。具体的に、40歳安静時心拍数(朝、起床時で、身体を起こす前に測った心拍数でかまいません)が60拍/分の人の最大心拍数の60%の強度で計算します。
 年齢と共に最大心拍数が、低下することがわかっているのでまず最初に年齢に応じた最大心拍数を求めることから始めます。
 ・推定最大心拍数を求める:220−40(年齢)=180拍/分
 ・心拍数予備力を求める:180(最大心拍数)―60(安静時心拍数)=120拍/分
 ・心拍数予備力に対した60%の強度:120*60(安静時心拍数)=120拍/分
 上記の計算から、40歳の人の最大酸素摂取量の約60%程度に相当する心拍数は、1分間当たり132拍ということになります。この値は、全身持久力のトレーニングで目安となる心拍数です。前述の式をうまく使えば、個人の目安となる心拍数を求めることができます。
 また、全身持久力のトレーニングでは、主観的な運動強度(RPE)で行うこともしばしはあります。
 図2にRPEを示しました。これは、トレーニング実施者自身が感じる強度感賞を数字で示したものです。左の数字を10倍すると運動時の心拍数になるとされています。前述したように年齢と共に最大心拍数は低下するため、運動の目安として使うときには、年齢によっては多少の調整が必要となります。話ができるくらいの強度感覚は、概ねRPE11から13に値し、全身持久力の強度感覚としては適切であり、有効です。
○トレーニング頻度
   週に何回程度トレーニングするかという回数のことです。週に1回では、あまり効果は期待できません。週に2回では、現状を維持するに止ります。理想的には、週に3回から5回程度の回数を定期的(週3回なら月、水、金や、火、木、土)に実施することです。気が向いたときだけトレーニングをしてみたり、また競技スポーツなどで雨の日だけ体力トレーニングをするようでは、筋肉痛を招くだけなので、むしろ休養を十分とったほうがいいでしょう。
○トレーニング時間
   トレーニング全体にかける時間のことです。全身持久力のトレーニングでは、30分を目安に実施しましょう。ただし、体力に自身のない人などは、5分程度から始めて徐々に時間を延ばすと良いでしょう。全身持久力以外の体力トレーニングでは、プログラム全体でも1時間以内におさめるとよいでしょう。
○トレーニング期間
   トレーニングを始めて効果の現れるまでに必要な期間のことです。トレーニング効果は、トレーニングを始めたからといってすぐに現れるものではありません。また、体力のレベルや強度によっても多少異なります。思うほど早く現れることはありません。効果が期待できるのは、だいたい1ヶ月から3ヶ月間は必要です。特に体力レベルの高い人ほど効果の現れるまでには時間が必要です。
○トレーニング種目
   効果をだしたい体力のトレーニングを実施するためには、その目的に応じたトレーニング種目を選ぶということです。スタミナを高めたければ、水泳やジョギング、サイクリングなどより全身的なトレーニングを選び、筋力やパワーを高めたければダンベル、バーベルを使ったレジスタンストレーニングや、マシンを使ったトレーニングを選びましょう。
 これらがトレーニングを実施するうえで、必要なトレーニング条件です。そして、トレーニング効果を出すために何よりも大切なことは、これらの条件を全て満たさなければならないということです。たとえ、一つでも満たさなければ、残念ながら効果は期待できません。体力トレーニングを始める時には、上記の条件を全て満たせるようなことから始め、決して勢いだけで始めたり、急激に始めないように十分気をつけてください。

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