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スポーツ医科学レポート

練習の中に組み入れることのできるメンタルトレーニング
 
鈴木 壯(岐阜大学教育学部)

 練習の効率を良くしたり、技術獲得をしやすくしたり、実力発揮の機会を増やしたりするために、心理面のトレーニング(メンタルトレーニング)の必要性が叫ばれ、選手やチームのなかには、実際にそれを取り入れているところや、取り入れようとしているところが多くあるようです。取り入れるにあたっては、実力発揮や競技力向上ができない状況とその原因を十分に理解していることが必要です。また、「こころ」をトレーニングするために、その成果を実感することは難しいこと、そしてそれなりの時間とエネルギーをかけて本当に地道に取り組んでいかねばならないことも、あらかじめわかっていないといけません。「わずかの投資で奇跡を期待する」ことはできません。すこしずつやっていくと、徐々にその成果が感じられるようになります。
 今回は簡単に実施できる方法をひとつ紹介します。それほど難しくありませんが、少し面倒ですし、早く上達したいとか、強くなりたいという気持ちをおさえて、じっくり取り組まねばなりません。それは、「どうもこのプレイがうまくいかない」、「この場面でいつもミスする」といったときに、それを改善するために用いることのできる方法のひとつです。たとえば、大事な場面でサーブミスをするバレーボールの選手、チャンスに打てない野球選手がいたとしますと、大事なときのサーブミスを少なくしたり、チャンスに打てるようにするために用いることのできる方法のひとつです。
 まず、初めはできるだけ静かで落ち着ける部屋で行います。そして、筆記用具と白紙を用意します。それから、リラックスした雰囲気の中で、ここに挙げたバレーボール選手や野球選手ですと、大事なときにサーブミスする場面、チャンスに打てない場面を思い出させます。そして、その場面での体の動きや力の入れ具合、タイミング、さまざまな感覚、呼吸のリズム、考えてること、などをできるだけ詳しく紙に書かせます。選手が自分一人ではわからないときには、指導者がその場面での選手の様子を行ってあげたり、他の選手にその選手の動きについて言ってもらったりして、それらを参考にさせます。この場合、指導者は何から何まで全部教えることは避けて、ちょっとしたアドバイス程度にし、あくまでも選手自身で考え、感じたことを大切にさせた方が良い。
 うまくいかなかった競技場面の詳しい記述ができあがったら、選手に自分の書いた記述をリラックスした状態で数回繰り返し読ませます。読んでるうちに、経験を積んだ選手ならば、うまくいかないときと、うまくいくときの動きの違いかわかるようになります。わからない場合は、指導者がその違いをわかりやすく、ていねいに教えてあげます(初めから教えるのではない。教えすぎも駄目)。その違いがわかったら、その後で、うまくいってる場面の動きをイメージさせます。これを一日3〜5回(1回4〜5分ぐらい)3日間行わせます。このイメージは、スローモーション・ビデオのようにゆっくりと、ここでとりあげた選手では、サーブ、バッティングのすべての動きがイメージできるようにします。
 次の段階では、サーブ、バッティングの動きの中から4〜6つの重要なポイントを選び出し、少し速いスピードでその場面をイメージさせます。イメージが安定してきたら、動作のイメージの中に呼吸のイメージを組み入れます。当然のことですが、サーブやバッティングのときの呼吸がどうなってるかについて知った上で行わないといけません。第2段階は4日間行います。この間のうまくいかない場面の記述からイメージ練習まで、選手には、少なくとも問題となっている競技場面に関しては、一週間練習をさせないようにします。第2週目からイメージ練習と実際の動きを組み合わせた練習を開始します。つまり、その競技場面をイメージしてから実際にその場面にいるつもりでプレイする、ということを繰り返します。それを続けていくと、うまくいかなかったプレイが少しずつうまくいくようになります。ただし、すぐ結果を出そうとあせってはせっかくやってきたことが無駄になります。あくまでも、じっくりやることが大切です。このような方法は、日常の練習の中に取り入れていくことができますし、これほど詳しいものでなくても普段やっていることとそんなに違わないと思う選手やチームがいるかもしれません。少し面倒なこともあるかもしれませんが、難しそうな技法を用いなくても、工夫した練習方法のひとつとして、ここに述べたイメージを用いた練習を実施することができると考えられます。
参考文献
 ・市村操一(1993)「トップアスリーツのための心理学」、同文書院

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