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スポーツ医科学レポート

スポーツリハビリテーション

山賀 寛(やまが整形外科)

 スポーツにおいては、けがや故障はある程度はつきものです。しかし、けがや故障をかかえた状態では、満足なプレイはできず、できるだけ早期に治して、十分な競技能力を発揮できるようにする必要があります。
 スポーツリハビリテーションとは、このようにけがや故障をおこした選手が、早期に完全にスポーツ復帰できることを目指すものです。しかしスポーツといっても様々な種類があり、またポジションによっても違いがあり、さらにレベルによっても治療のゴール設定が異なり、選手個人個人に対応するリハビリテーションが求められます。したがって、スポーツリハビリテーションを行うには、医師、理学療法士、トレーナー、コーチ、監督などの相互の理解と協力が必要となります。治療を行う医療側には、スポーツの動きなどに対する知識と理解が、現場のコーチなどには、スポーツ医科学的な知識が要求され、両者が情報交換をしあってうまく機能していくものであります。しっかり治るまで医者に面倒をみて貰ってこいという放任主義も困りますが、選手が医者へ行くことをきらい、自分の経験論から素人判断で対処してしまう監督も問題であります。
 スポーツリハビリテーションの順序、その内容について簡単に説明します。まず始めに行われるのは、けがや故障の診断と評価、治療方針の決定であります。これがスタートであるためできる限り正確な診断が要求されますが、けがや故障によっては、一回の診察だけではわからない場合もあり、さらに検査、手術などを必要とすることもあります。例えば、足首の捻挫でも、軽症、中等症、重症の大きくわけて3段階があり、その程度によって、テーピング、ギプス、手術などと治療手段が変わってきます。もし始めにかかった医者の診断、治療方針について疑問を持つ場合には、他の医師の意見を聞いたり、けがや故障の種類によっては、専門医に診て貰ったほうがよい場合もあります。次に痛みや腫れの程度、関節の動き(可動域)と安定性、筋力などを評価して、リハビリテーションの目標や計画をたてます。リハビリテーションは必ずしも計画通り進まないこともあり、途中で評価、計画の変更などもおこりえます。チーム事情や選手の自己判断で勝手に治療を打ち切り、無理をして再発する選手などもよくみられ、始めにどの程度の期間でスポーツ復帰可能になるかを、選手本人や監督にきちんと伝えておく必要があります。
 リハビリテーションとしては、大きく分けてけがや故障部位(患部)のものと患部以外のものとがあります。けがの場合には、初期には安静、氷冷、圧迫、挙上(RICE処置)が必要で、患部に対しては、等尺性運動(関節を動かさない状態での筋力訓練)が主体となります。ただし安静によって、患部以外の筋力低下や、全身持久力の低下がおきないようにトレーニングを平行して行います。つまりスポーツリハビリテーションとは、けがをおこしたと同時に始まると言っても過言ではありません。安静期(けがの程度によって異なりますが、約1週間前後)が過ぎたら、温熱療法、電気治療を行い患部の血液循環の促進を図り、痛みや関節可動域の改善に努めます。腫れや痛みの程度を評価しつつ、関節の動きを制限しながら少しずつ抵抗運動を始めます。体重をかけない状態での可動域訓練や筋力訓練を行いますが、この時期の運動療法は無理をすると症状が悪化することもあり、特に慎重を要します。筋力が回復し、体重を支えることができるようになったら、テーピングなどで患部を保護しつつ運動療法を行います。最近は、筋力を測定するよい機器があり、筋力の回復具合を評価しつつ、運動療法を進めます。同時に再発を予防するために、基礎体力の強化、神経反射、平衡感覚などを高める協調性運動訓練なども行います。スポーツ障害では、腰や膝や足首の占める割合が高く、普段から足腰の強化がなされていれば、防ぐことができたと思われるケースが多くみられます。治療していて腹筋運動のできない基礎体力の劣る選手がいることには驚かされます。こういった基礎的なトレーニングは技術練習に比べて地味で、単調で飽きてしまいがちでありますが、冬場や雨降りの日に行うだけでなく、日頃の練習の中に定期的に取り入れる必要があります。痛み、腫れ、可動域、筋力の改善が得られたら、ランニングや少しずつ練習への参加を許可します。選手は走れるようになると治ったものと自己判断して治療を打ち切ってしまうことが多く、医療側と現場とで情報交換しつつ運動レベルを上げていくことが重要です。再発予防のために患部のトレーニングやテーピングなどを行いながら完全復帰をはかります。
 スポーツによるけがや故障の予防には、心・技・体を含めたコンディション作りに努めることが必要で、不幸にもけがや故障をおこした時には、できるだけ早期にスポーツリハビリテーションを行うことが大切です。

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