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スポーツ医科学レポート

突然死について

岩砂和雄(岩砂病院院長)

 WHOによる突然死の定義は24時間以内の原因不明の内因死(外傷などによるものでない)とされています。実際に「事前に予期できない」という定義からも推測されるように情報に乏しく、疾患内容の検討が困難なことが多い。
 
日本体育学校健康センター1)の資料によると児童・生徒の突然死の実態は以下のようである。

  1. 毎年、学校内または通学中に250人前後の児童・生徒が死亡している。その内45〜60%の児童・生徒が突然死であり、年間120〜150人位の児童・生徒が突然死している。
  2. 学校郡別に突然死の発生頻度を見ると、高校生が最も高頻度で、中学生、小学生の順であった。
  3. 突然死の原因を見ると児童・生徒の約80%が心臓に原因した突然死であった。
  4. 突然死が起こった状況を見ると運動中・運動後に突然死した児童・生徒が約60%であった。また、斉藤ら2)の報告によれば、年齢によって原因疾患は異なり、若年者では原因不明の突然死または心筋疾患が多く、30歳過ぎからは虚血性心疾患(冠状動脈疾患)が増加し、50歳過ぎの高齢者では70%以上を占めていると報告されています。

 この様に突然死の原因は心疾患以外にも色々ありますが、今回は突然死の大部分を占める心疾患に問題をしぼってお話します。
 いうまでもなく健康成人の心臓は1回の収縮による心拍出量50ml〜80mlの血液を動脈に送り出しており、心拍数を1分間60として24時間でなんと4.3トン以上の血液が心臓より送り出されることになる。心拍のリズムは心臓の洞結節で発生し、その興奮は心房筋を収縮させ、房室結節、ヒス束、左右の両脚へと伝わり、最終的に左右の両心室筋を収縮させて心臓の拍出力を発生させます。そして洞結節でのリズムは自律神経である交感神経と副交感神経の影響を強く受けています。運動時には運動筋での酸素需要が増すと、これに対して心臓は自律神経に変化(交感神経の活動または副交感神経の消退)によって心拍数が増加することにより心拍出量を増し、運動筋の血液需要に対応しています。一方、安静時や睡眠時、食事時にはこの反対のことが行われています。さらに心拍数は頚動脈や心肺にある血圧受容体(せんたー)からの影響も受けていることも忘れてはなりません。そして血圧は循環血液量、副腎皮質ホルモン、腎血流量とそれに関係するホルモンや末梢動脈の緊張と、前述の心拍出量によりコントロールされているのです。それ故我々が突然死を考える時、この複雑なメカニズムと循環器系疾患を念頭に置く必要があります。

突然死を起こしやすい心疾患

  1. 先天性心疾患(心奇形及び各種弁膜症、冠動脈異常、特発生心筋症)

  2. 後天性心疾患(心筋炎、川崎病、冠動脈硬化狭心症、心筋梗塞)

  3. 不整脈(心室性期外収縮、完全房室ブロック、完全左脚ブロック、家族性QT延長症候群WPW)

  4. 先天性心疾患(心奇形及び各種弁膜症、冠動脈異常、特発生心筋症)

  5. 後天性心疾患(心筋炎、川崎病、冠動脈硬化狭心症、心筋梗塞)

  6. 不整脈(心室性期外収縮、完全房室ブロック、完全左脚ブロック、家族性QT延長症候群WPW)

  1. に関しては心臓の型体的異常より発生する機能異常を認めるものであり、専門医のチェックを受ければ発見はさほど困難ではない。
  2. のうち冠動脈の狭窄を来たすものや、無症候性の心筋梗塞や心筋炎には本人も気付かないことが多く、以前のチェックでは異常を指摘されなかったが、年齢と共に進行するものが多い。さらにその予備群として小児成人病が昨今注目をあびており、そしてこれらの疾患の発見と予防には頻回のメディカルチェックが必要とされます。
  3. 不整脈は本人が前胸部の不快感や、動悸として感ずる場合もありますが、全く気付かない場合も多く、心電図検査で発見されることもありますが、心電図検査でも発見されないことが多いので、やっかいな問題となっています。そして、心筋梗塞や狭心症が原因で各種の悪性の不整脈が発生し、突然死を来たすことが大変多く、臨床医学上でも大きな問題となっています。

 以上の点より突然死の予防はなかなか困難な問題ですが、やはり第一には頻回のメディカルチェックがひつようです。そして本人が異常を感じた時、気軽に専門医に相談することが出来るように体育教師、コーチや関係者は日頃から突然死の問題を話題に取り上げて、突然死の防止と早期異常発見に努めるべきです。

文献
1)日本体育・学校健康センター学校安全部編
:学校管理下の死亡・障害 1988、日本体育・学校健康センター
2)斉藤文洋他:剖検例にみる心臓性突然死の背景、
CARDIAC PRACTICE Vol.6 No.3 1995

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