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スポーツ医科学レポート

成長期における使い過ぎ症候群

中根康雄(中根整形外科)

 使い過ぎ症候群は、1885年Breithauptにより報告されました。反復する動作と繰り返されるひっぱり力や負荷が一か所に集中することによっておこる障害です。
 症状は運動時痛や運動後に見られる腫腸、局所の熱感、発赤、圧痛そして機能障害です。運動中や運動後の痛みが殆どで他の症状は見られない事もあります。
 筋、腱が障害を受けやすい要因には、内因性要因として@マルアライメント、A筋力のアンバランス、B柔軟性の欠如、C成長、があります。成長とは身長が急に伸びると、筋、腱が過伸展されて障害を受けやすくなることをいいます。外因性のものとして@間違ったトレーニング方法、A誤った技術、B不適切な用具、Cグラウンドの状態、D靴、などがあります。これらはメディカルチェックである程度予防することが可能です。
 上肢では、肩関節や手関節の靭帯のゆるみや肘関節のcarrying angleに注意をはらいます。下肢ではO脚やX脚の有無、Q角の異常、偏平足、回内足の有無などをチェックします。これらを正しく把握することにより、将来おこりうる障害を予測して指導者に注意を促すことができます。機会があればメディカルチェックを受けることをお勧めします。
成長期における使い過ぎ症候群は、適切な診断、治療、指導を誤ると、将来関節の変形や機能障害をきたし、二度とスポーツを楽しむことができなかったり、満足なスポーツ活動ができず悶々とした人生を送ることになりかねません。
 図1は年齢の増加に応じた身体器官の発達を示したものです。神経系(動作の習得)の発達は小学生低学年の頃にピークを迎えます。
次に呼吸循環系(ねばり強さ)は中学生の頃に、筋系(力強さ)は中学から高校にかけて著しい発達を遂げます。年代に応じた身体的特徴をよく理解しないで過大な負荷をかけることは大変危険です。例えば、小学生低学年で強力な筋力トレーニングを行えば、筋力アップどころか関節や靭帯を壊してしまう事になります。
成長期小児の身体的特徴は次のようなものです。

@小児の関節は骨の部分が少なくてほとんど軟骨で構成されているため外傷を受けやすく、血行障害も起こりやすい。

A関節を支持している靭帯、腱や筋肉が弱いためぐらつき易い。

B骨の伸びは常に筋肉や腱の伸びより早いため、筋肉はいつも引き伸ばされた状態にあるので、過大な力が繰り返し加わると筋肉や靭帯の付着部で微細な断裂を容易に受けやすい。

 これらが絡み合って成長期の小児特有の障害を発生します。この時期の小児は大人を単に小型化したものではないことをしっかりと頭にインプットして下さい。
 代表的な使い過ぎ症候群を示します。その一つは『野球肘』です。少年野球のピッチャーが使い過ぎにより投球中、投球後に肘痛をきたすものです。図2の様に、投球の始動期から加速期の前半にかけては肘関節は外反位、前腕は回外位をとるので肘内側に強い牽引力がかかるため、靭帯の微細断裂や関節軟骨の破壊、微細骨折を起こします。外側では軟骨同志がぶつかりあうので軟骨破壊をきたします。肘に痛みがあり完全に肘が伸びなかったり、曲がらなかったりします。投球を中止(走塁、バッティングは行ってよい)すれば、約3ヶ月後には痛みも消失します。痛みもなく関節可動域が正常になれば軽いキャッチボールから投球を始めます。痛みがとれなければ手術後に剥離した骨片を摘出します。

 オスグッド病は膝におこります。膝蓋骨の下の骨の高まり(脛骨粗面)に痛みや発赤、熱感をきたします。脛骨の骨端軟骨に膝蓋腱の強い牽引力が繰り返しかかって壊死や小骨折、腱炎をおこします。安静やストレッチング、アイシングで痛みや消失しますが、運動量を急に増やすと容易に再発します。
 身長の急激な伸びやマルアライメントが原因になることもあります。14歳頃には骨端線が閉鎖しますので自然に治ります。
 指導者は成長期の子供の関節の痛みの有無を注意深く観察し、異常が見られたら出来るだけ早く専門医の診察を受けさせることがその子供にとって幸せであることを確信します。

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