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スポーツ医科学レポート

「スポーツとメディカルチェック」

牧野和彦(岐阜大学医学部・中央検査部)

 スポーツを安全かつ効果的に行うためには運動前のメディカルチェックが必要であり、さらに運動の効果を知る目的でその後の定期的メディカルチェックが必要となってきます。実際には、これから初めてスポーツをする人、すでに十分なトレーニングをしている人などそれぞれの条件によって異なります。学童期の児童や中高年者など年齢によってもチェックの重点が異なってきます。
 スポーツは大きく競技スポーツとレクリエーションスポーツに分けられますが、その目的は異なってきます。
 競技スポーツの目的はプロであれアマであれ、競技に勝つことが中心になります。したがってメディカルチェックの目的も競技参加やトレーニング遂行のための障害を発見し、その弱点を早く是正することに重点がおかれ、体力テストや医学検査項目でも最大能力発揮時のテストの結果を参考にしなければならないことが多くなります。
 一方、レクリエーションスポーツにおいては競技に勝つことではなく、健康維持・増進や疾病予防・治療がその目的となります。
 スポーツ中の事故で最も重要なものはスポーツ時の突然死です。突然死の原因は心血管系疾患が圧倒的に多く、若年者では先天性冠動脈奇形および肥大型心筋症が、中高年では、虚血性心疾患(冠動脈疾患)がその主なものであり、虚血性心疾患を検出することはメディカルチェックの重要な目的のひとつです。
 一般に高脂血症(血中のコレステロールや中性脂肪が高い状態)が長く続くと、全身の動脈に脂質が付着して動脈硬化を引き起こします。さらに動脈硬化が進むと最終的には脳卒中や心筋梗塞などの死の危険を伴う病気に至ることがよく知られています。
 スポーツは悪玉コレステロール(LDL−コレステロール)や中性脂肪を減少させ、善玉コレステロール(HDL−コレステロール)を増加させることにより、動脈硬化、高血圧、肥満、糖尿病などの予防や治療に有効と考えられています。
 しかし、スポーツは活性酸素(フリーラジカル)を増加させるというマイナス面もあわせもつことに注意しなければなりません。
 生体は活性酸素(フリーラジカル)の傷害から身を守るための処理機構を有していますが、時として消去系の制御を逃れて重篤な組織傷害をもたらすことがあります。その機序は必ずしも明らかになっていませんが、悪玉コレステロール(LDL−コレステロール)が活性酸素(フリーラジカル)により変性され、動脈硬化の原因となることは一般的に広く認められています。さらに、老化、発癌、あるいは各種臓器の疾患の原因ともなる可能性が示唆されています。
 活性酸素(フリーラジカル)による傷害はビタミンE,ビタミンC,β−カロチンによりある程度予防することが出来ると言われており、スポーツを行う場合には、特に食事のバランスに注意する必要があります。
 最近のトピックとして、従来から知られている悪玉コレステロール(LDL−コレステロール)とは異なるLp(a)リポ蛋白という危険因子が注目されてきました。いわゆるコレステロールの値が正常の人におこる虚血性心疾患の原因のひとつと考えられます。
 このLP(a)リポ蛋白は遺伝による規制が大きく食事や薬剤などの環境因子の影響をあまり受けません。また、スポーツによってもあまり減少せず、活性酸素(フリーラジカル)による変性をうけるとさらに強力な危険因子となる可能性が示唆されており、今後メディカルチェックの重要な検査項目になると思われます。
 スポーツによる突然死を完全に予防することは現在のところできませんが、適切なメディカルチェックを行い、現場の救急体制や指導者らによる一次救命処置(人工呼吸や心臓マッサージなど)を充実させることにより、その一部は救命できるものと考えられます。

   


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