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スポーツ医科学レポート

スポーツにおける『タメ』とは

山本英弘(朝日大学法学部)

  1. 『タメ』って何?
     スポーツの世界でしばしば耳にし、口にする言葉の一つに『タメ』があります。例えば、野球では「タメて打て」とか「もっとタメて投げないとボールが走らない」という使い方をします。ところで、『タメ』は「溜める」と言う言葉からきていますが、この言葉には「@とどめる。Aせきとめる。B集めたたえる。多くあつめる。たくわえる。Cとどこおらせて、ふやす。」(広辞苑)という意味があります。では、この『タメ』をゴルフスウィングを例に現象的に捉えてみると「スウィングの主動作(ダウンスウィング)の前のテイクバックにおいて、主として働く筋(大腿部や腰回りそして体幹の筋)を一度引き伸ばし、その時に蓄えられた弾性エネルギーと筋事体の収縮力でボールを打つ。」というようなことでしょう。すなわち、『タメ』とは準備動作(テイクバック)においていかに大きな反動のエネルギーを蓄えておくか」ということでしょう。このような『タメ』は野球やテニスでの「打つ動作」や野球のピッチングやヤリ投げのような「投げる動作」に多く見られます。

  2. 『タメ』によって力が増す
     図1をご覧ください。横軸には筋の長さ、縦軸には発揮された力を示しています。図中の実線はそれぞれの筋の長さの時に発揮された力を、破線は筋が引き伸ばされた時の張力(受動的)を示します。縦軸のF2は筋の長さ100%(筋が弛緩した状態での長さ)、F3は筋の長さ75%の時に発揮された力です。F4は筋の長さ120%の時の力であり、この時もっとも大きな力が発揮されています。これはF2の力に引き伸ばされた際の張力(弾性エネルギー)を合わせた結果なのです。ところが、張力の利用もここまでで、これ以上引っ張られると弾性エネルギーは増しますが、筋収縮のメカニズムに悪影響があり発揮される力の増加は見込めません。以上のように、筋が強制的に引っ張られ、引っ張られない状態での力よりも大きな力を発揮することができることから、『タメ』は多くのスポーツにとても有効なのです。

  1. 『タメ』で得られた力を効率よく使う
     単純な動作ならば『タメ』で得られた力を一気に発揮すればよいのですが、多くのスポーツは多数の筋と多数の関節を働かせての複雑な動きです。せっかく溜めた+αの弾性エネルギーと本来の筋力を一気に発揮することは逆に効率の悪い力の発揮になります。
     では、図2をご覧ください。この図は『タメ』によって得られた力を効率よく発揮している流れを示したものです。図中のグラフは、ゴルフスウィング中の運動量(どれほど働いているか)を模式化して示し、横軸に時間(ダウンスイング開始から)の変化を、縦軸は運動量の変化を示しています。まずは、打撃動作の初期には脚や腰が動き出し腰の仕事量によってスウィングが行われていることが分かります。この時、肩や腕さらにゴルフクラブはその腰の動きについて行くだけです。3段ロケットにたとえるならば1段目のロケットが燃焼し2・3段目はその上に乗っているだけという状態と同じです。このようにして順に3段目のロケットまで燃焼し目的を達成するのです。もし、3つのロケットが同時に燃焼してしまったならば、結局3段目のロケットの燃焼エネルギーのパワー、すなわち、手先だけで打つ「手打ち」状態となりよい結果は望めないでしょう。
     このように、『タメ』によって蓄えられた力を一気に使うのではなく、動きの基盤となる脚、腰、肩……そして手先(用具)と順に使うことにより、効率よくエネルギーを使うことができるのです。このような動きを、ちょうど鞭(むち)を打つときのしなやかな鞭の動きに似ていることから「鞭効果」と呼んでいます。指導者は、このような「鞭効果」を有効に活用するためにも、それぞれの競技者に合った正しいフォームを指導する必要があります。

   
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