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スポーツ医科学レポート

スポーツ指導腰部の外傷
中根康雄
(中根整形外科)

 まず簡単に腰椎の構造を説明しましょう。腰椎は、

5個の椎体から構成されています。上から、順に第12345腰椎と呼びます。これら椎体の安定を計るために、前側(腹側)に縦に長い前縦靭帯と後の後縦靭帯で固定され、棘突起の間の棘間靭帯、棘上靭帯でも補強されています。椎体と椎体の間には椎間板があり、脊椎のある程度の動きとクッションの働きをし、後面では上下の開節突起がお互いにかみ合って椎体のズレを防止しています。さらに脊椎を腹筋、背筋、腸腰筋が固定し、骨盤を介して腰椎を動かすために四頭筋、大背筋、膝屈筋があります。(図1
 四足動物が重力に逆らって起立したために我々二足動物は、腰部に決定的な弱点をもっています。骨盤の上に腰稚が不安定な状態で乗っていることです。立位で常に水平面にたいして30〜45度で傾きずり落ちそうになっています。それを止めているのが、上に書いた靭帯や筋肉です。この様な構造上の弱点により人間には腰痛はつきもので、全人口の2〜3人に1人は一度は腰痛に悩むと言われています。 
 スポーツ安全協会(1997年)の発表によれば88531例のスポーツ傷害中、手指部15686例、足関節14910例、膝9857例、腰部傷害は十番目で2256例、その内訳は表1の様に、捻挫、打撲で70%をしめます。種目別の腰部傷害(表2)はバレーボール、バトミントン、サッカーに多く見られます。スポーツによる脊椎外傷・障害の発生メカニズムは脊椎の正常運動範囲外の運動を強制されるような過大な外力によって生じる外傷性のものと、脊椎が正常範囲内で、繰りかえしストレスを受けて起こる障害性のものとがあります。
 では、今回はスポーツ選手や日常でもよく見られる腰椎捻挫 いわゆる ぎっくり腰について具体的にお話しましょう。日常でも良く見られるもので、稔りが加わって物を持ち上げる時、自分の予測と異なって重すぎたり、また軽すぎたりすると起こるごくありふれた外傷です。その程度はさまぎまで、一晩寝ると治るものから数週間にわたって歩行ができないものまであります。また腰の捻挫くらいと軽く考えて、ろくに安静もしていないと慢性的な腰痛症になって行きます。腰仙部の軟部組織、靭帯、椎間板、椎間関節、筋肉や筋膜の損傷は一時的に組織の浮腫、軽微な出血、断裂を来し、普通、一時的な安静でスポーツの復帰も難しくありません。

しかし、これらが繰り返されると、癒痕組織となり、局所の循環障害や筋肉の萎縮、拘縮をおこし、軽度な捻りでも簡単に腰痛を起し慢性化してゆきます。急性期の治療は、腰を安静にして、堅めの布団に膝を曲げて寝ます。その際、局部にアイスパックや冷湿布を当ててください。この時期はマッサージは厳禁です。消炎鎮痛剤の服用やコルセットの装着も有効です。一般的にレントゲンにはほとんど異常は見られません。軽度なものは

23日で治癒します。それでも軽快しないものは、温熱治療やマッサージ、軽いストレッチングをおこないます。繰り返し起こる腰痛により次第に、
@腰椎の前弯(腰のそり)が強くなり、
A腹筋の筋力低下
B背筋や下肢筋肉の柔軟性の低下
C背筋の筋力低下
が見られるようになり慢性化に移行していきます。 
 これらの姿勢・筋肉のアンバランスを改善させる目的で、
@体幹・下肢筋肉の柔軟性の改善
A骨盤の前傾腰椎の前弯の改善
B腹筋・背筋の筋力増強やストレッチング
が効果があります。局所の庄痛の著明なもの(椎間関節捻挫のことが多い)には、圧痛点にブロック注射も大変効果があります。椎間関節の捻挫では関節の移動や関節包が伸展されると、その上を走行する腰神経背側枝が強く刺激されることにより、激烈な痛みが発生します。足へのシビレのある場合には、椎間板ヘルニアを合併している可能性もあります。このような場合にはMRl検査が必要です。その結果によって手術をせねばならない時があります。最近、若年老の稚間板ヘルニアには経皮的髄核摘出術が行われ、スポーツ復帰も格段に早くなっています。一般的に筋肉や靭帯が切れると修復されるのに、3週間、しっかりと繋がるまでは6週間を要することを記憶しておいて下さい。腰の前後屈、回旋時の痛みが軽減してくれば、後々に運動を再開してください。たかが「ギックリ腰」と軽率に扱わないで23日は安静にすることと日ごろからのストレッチングが慢性化の予防になります