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スポーツ医科学レポート
足関節のスポーツ傷害(腓骨筋の強化で捻挫を予防しよう)
野口耕司(岐阜市民病院整形外科)
  スポーツ傷害(外傷と障害)の中で足関節部の占める割合は10%ないし15%と言われています。足部を車のタイヤに喩えれば車軸とサスペンションに当たるのが足関節です。スポーツ活動中の全体重を支え適格に推進力を足部に伝える働きをしています。そのためには着地面の傾きに合わせることができる柔軟性と体重を支えることができる安定性を場面に応じて持たなければなりません。その構造は脛骨下端と腓骨下端で構成する溝構造のなかを距骨の滑車部が滑りながら回転することで底背屈を行い、距骨とその下にある踵骨の間で内返しと外返しを行う斜めの関節面を持つ二重構造となっています。距骨滑車の関節面は前方が広く後方が狭くなっているため足関節背屈位では溝の中に広い部分がはまり込み荷重時の安定が保たれ、底屈位では狭い部分が溝に入り緩みができることから内返し方向に可動性が増える(図1)。脛骨と距骨、距骨と踵骨の間の2つの関節の安定性を支えるのが内側と外側にある靭帯です。
  足関節に怪我をしやすいスポーツはサッカー、ラグビーなどのコンタクトスポーツからバレーボール、バスケットボールなどのジャンプを伴うスポーツ、野球、ソフトボールなど滑り込み動作を行うもの、スキー、スケート、陸上など足を使うすべてのスポーツで起こり得ますがそのうちフットワークを必要とする種目が多いようです。足関節の怪我を予防するには充分な準備体操が必要なことは当然ですが、特に注目していただきたいのは遊脚期やジャンプ中は底屈位となるため足関節の構造から内返しになりやすいがこの際内返しにならないようにバランスを取るのが腓骨筋の作用です。外返し方向の動きを良くする運動と腓骨筋の筋力を増やすための運動が重要になります(図2)。
  さてスポーツ中に怪我をした場合の応急手当は他の部分の外傷と同じくアイスパックによる冷却と損傷関節の固定です。テーピングをして無理に試合を続けると損傷部がさらに拡大し軽い治療ですむはずのものが手術になったりすることもありますので無理をしてはいけません。局部を冷やしながら医師の診察とレントゲン検査を受けます。骨折の有無やそのズレの程度、靭帯損傷の程度などから手術、ギプス固定、テーピング、サポーター装着などの治療法が選択されます。捻挫や靭帯損傷のほとんどは外側のくるぶしの下方にある外側側副靭帯の断裂です。損傷の程度が軽い場合はテーピングやサポーターの固定によって三週間ほどでスポーツ活動に戻れます。重度の靭帯損傷で関節包の断裂を伴う場合などでは手術で靭帯の長さを保つように正確に縫合する必要があります。たかが捻挫と甘く見て治療を受けないで放置しますと後になって不安定な足関節となり、捻挫をくり返すようになります。そのような時には腱など他の組織を靭帯部分に移植することがあります。
  骨折にズレや転移がある場合には元に戻してしっかりと固定する必要があることから手術が選択されます。足関節はすでに述べたように歯車とほぞのように正確に噛み合ってその機能をはたす事が出来るわけで少しのズレでも残すと後になって痛みの原因となります。足関節を4〜6週間ギプス固定しますと関節周囲の軟骨組織が硬くなり直ぐには元の動きを得ることは出来ません。1〜2ヶ月間は可動域訓練や筋力訓練が必要で、スポーツ復帰には少なくとも3ヶ月が必要です。
  距骨関節面の障害には膝関節と同様に離断性骨軟骨炎と呼ばれる骨軟骨骨折があります。スポーツ活動の活発な成長期の男子に好発します。成長期の柔らかい骨軟骨に繰り返し強い圧迫や旋断力が働いて疲労骨折を起こすものと言われています。早期に診断されれば装具などで治療ができますが、骨軟骨片が分離しますと骨軟骨片の切除や骨移植を併用した固定術が行われます。
  足関節周辺の軟部組織に由来するスポーツ傷害としてはアキレス腱付着部炎、足底腱膜炎があります。いずれも腱や靭帯が骨に付着する部位で痛みを起こします。準備運動の不足やオーバーユースが原因で、マラソンランナーや中年のスポーツ愛好家に多く見られます。運動量を減らすことや足関節のストレッチ運動を勧めます。かかとの部分にはクッションのついた靴を使うことや軟らかい中敷きを使うことで軽くすることができます。頑固な痛みが続く場合には付着部の一部を切離するなどの手術も行われています。足関節部のスポーツ傷害は成長期では骨軟骨障害が、成人期には骨折や靭帯損傷などの外傷が、中年期では靭帯や腱付着部など軟部組織の障害が多く発症します。足関節の構造の特徴を理解した上で準備運動やストレッチを充分に行うことで足関節のスポーツ傷害を減らすことができます。