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スポーツ医科学レポート
これからの高地トレーニング
古田善伯(岐阜大学教育学部)
   3,000m程度の高い山へ登ると、呼吸数や脈拍数が増加してきますが、これは空気中の酸素(酸素分 圧)が低いために生じる一時的な身体の適応といえます。さらに高地に長期間滞在していると、今度は酸 素を運搬しやすい身体に変化してきます。このような状態を高地順化といっていますが、一旦高地順化が できあがると、平地に移動してもしばらくはこの状態が維持されます。このような身体変化は、特に酸素 を必要とする持久的種目の競技者にとっては有利に働いてきます。一方、高知に滞在しながら持久的トレ ーニングを行うと平地でのトレーニング以上の効果が生じることが知られています。つまり、高地トレー ニングを行うと、高地に滞在することによって得られる効果(高地順化)と持久的トレーニングを行うこ とによって得られる効果(トレーニング効果)の2つの効果が合成され、平地でのトレーニングよりも高い 効果が得られることになります。この効果を期待して、これまでにいくつかの高地トレーニングが実施さ れてきました。高地トレーニングの効果については多くの報告がなされていますので、今回は高地(高所 )トレーニングの方法を中心にして解説することにします。
  以前から行われてきた高地トレーニングでは 1〜3ヶ月程度高地に滞在し、そこでトレーニングを行うという方法が中心でした。つまり、図に示した T型:高地滞在+高地トレーニング(Living high,training high)という方法で行われてきましたが、 この方法では平地と同様な強度のトレーニングを行えないことや、長期間高地に滞在するため疲労が蓄積 して身体のコンディションを良好に維持できないケースが多くなることが分かってきました。そこで、こ の方法を修正する方法が考えられるようになってきました。その中でレビン教授(1991年)らは、図 のU型:高地滞在+低地トレーニング(Living high,training low)に該当する方法が有効であるという 研究成果を報告しています。この報告では、2,500mの高地に4週間滞在し、その後1,250mの低 地で4週間トレーニングを行うという方法が実施されました。つまり、この方法は高地で順化させ、トレ ーニングは低地で充分な強度で行うというものです。今後は、T型からU型の高地トレーニングを中心と して研究されるものと思われます。岐阜県の御岳山近くが海抜2,000m程度ですので、U型の高地トレ ーニングを行うには適当な場所といえます。今後は岐阜県の地の利を生かして高地トレーニング施設を設 置することにより、日本において高地トレーニングが盛んに行われるようになることが期待されます。
  おわりに、日本陸上競技連盟が高地トレーニングのガイドラインを提示していますので、そ の内容を簡単に紹介してみます。
1.高地トレーニングの期間:(前略)一般的には3週間を目   処にし、初めての場合は体調を崩しやすい。短期間(3泊   4日)、または1週間程度の高地トレーニングを数回経験し   た上で3〜6週間の長期トレーニングを実施することが望   ましい。
2.標高:世界的には2,300m前後がよいといわれている   が、スピード練習を行う必要のある種目では、1,800〜   2,000m程度の標高をベースとすることが望ましい。(後   略)3.高地トレーニング後の試合:短期的高地トレーニン   グでは、下山後2〜3日目で好成績がでるようである。長   期的高地トレーニングでは、5〜6日後、またはそれ以後   に好成績が出る可能性が高い。