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スポーツ医科学レポート
グリコーゲンローディング
早川麻理子・松岡敏男(岐阜大学)

●グリコーゲン

  エネルギー源として体内に貯蔵されている栄養素には、糖質、脂質、蛋白質があります。糖質は、肝臓や筋肉の中にグリコーゲンと呼ばれるグルコースの長い鎖として体内に貯蔵され、運動の主たるエネルギー源となります。肝臓には、約100gのグリコーゲンが含まれており、全身の筋肉組織内に蓄えられたグリコーゲン量は普通の生活をしている人で約300g、よくトレーニングされた選手で500g以上あると言われています。筋肉のグリコーゲンは筋肉運動のためのエネルギー源として使われますが、肝臓のグリコーゲンはブドウ糖に分解されて血液に放出され、運動中の血糖の維持に利用されます。

●グリコーゲンローディング

    筋肉や肝臓における貯蔵グリコーゲンが増すと、選手は高強度で長時間運動することができますが、貯蔵グリコーゲンは枯渇すると選手は最大運動能力のおよそ50%でしか競技できないことが知られています。貯蔵されているグリコーゲンが枯渇する速度と程度は、1.運動強度、2.運動継続時間、3.トレーニング状態、4.糖質摂取状態の4つの因子に影響されると言われています。糖質摂取状態を向上させ、貯蔵グリコーゲン量を増加させてパフォーマンスを高めるために、栄養処方と運動を組み合わせた糖質の摂取方法:グリコーゲンの備蓄を「グリコーゲンローディング」と言います。

●グリコーゲンローディング法の実際

   実際グリコーゲンを筋肉内に多く貯蔵するためには目的とする試合の1週間前に疲労困憊となるような運動を行った後、高脂肪・低糖質食を3日間摂取し、肝臓や筋肉内のグリコーゲンを枯渇させます。その後高糖質・低脂質食に切り替える方法が筋グリコーゲンの備蓄には最も効果的であることが証明されました(図1)。

   しかし、筋肉にグリコーゲンを多量に備蓄する方法として開発されたグリコーゲンローディング法にはいくつかの問題点がありました。

@筋肉内にあるグリコーゲンを除去するための運動強度は、試合   
   前のコンディションを整えるという目的から離れ、選手にとって
   疲労が心配されるほど強度な運動となります。
A3日間の高脂肪・低糖質食により、下痢や風邪など体調を崩す
   危険性が伴い、精神的にも負担が多いと言えます。
Bその後の高脂肪・低糖質食は、炭水化物が多すぎるという問題
   があります。

そこでShermanらは、以下のような新しいグリコーゲン法を開発しました。

@運動処方は、運動強度70〜75%Vo2maxとし、運動負荷時間
   を徐々に短くしていく方法(テーパリング)を用いました。           A栄養処方は、始めの3日間は糖質を50%の混合食とし、その
   後、糖質を70%含む高糖質食としました。

新しいローディング法と古典的な方法とでは、筋グリコーゲン量は同水準まで増加していることが明らかにされました(図2)。

グリコーゲンローディングは、2時間以上継続して行われる高強度な運動に有効であるとされ、特にマラソンなどは、1回の試合で勝負が決まるため、グリコーゲンローディングなどでエネルギーを蓄えて試合に臨むことが大切であり、また効果的であると言えます。

                   ワンポイントアドバイス
   糖質を多く含む食品には、穀類、麺類、小麦製品、果物などがありますが、食物繊維の少ない消化吸収のよいデキストリン食品(カロリーメイトなど)は、溶液浸透圧への影響は少なく、グルコースの吸収量を増やすことができます。
   グリコーゲン合成を刺激するインスリン分泌を促すブドウ糖やじゃがいも、グリコーゲン分解系(ホスホフラクトキナーゼ)を阻害してグリコーゲンの分解を抑えるようなクエン酸を含むオレンジやグレープフルーツなどのジュースもよいでしょう。