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スポーツ医科学レポート  NO.14-4
4.測定評価の正しい活用
花井 忠征
(岐阜聖徳学園大学教育学部)

1.競技力向上と測定評価
 測定評価は、測定・検査・実験などで得られたデータを適切な統計学的手法を用いて分析し、その結果を客観的に評価するために活用するものです。近年、スポーツ科学の世界はめざましい進歩を遂げ、科学的根拠に基づく精密な身体情報(測定データ)が短時間に収集できるようになりました。その身体情報を目的にあわせて客観的に分析し、具体的な評価を見出すことのできる測定評価は、競技力向上の一助となるものです。

 岐阜県においては、スポーツ科学トレーニングセンターが競技者の体力・運動能力などを測定評価し、科学的にトレーニング内容を編成し、競技力向上のために貢献しています。トレーニングセンターの管理下では、適切な測定評価が実施され、競技者はパフォーマンスを向上させていくことが可能となるでしょう。しかし、現状は、トレーニングセンターを継続的に利用できる競技者ばかりではありません。また、専門家による競技力向上サポート体制を組織できない指導者が多いのではないでしょうか。そのため、指導者が測定評価の適切な活用法を理解し身につけることは、指導を進める上で強い見方となり、感覚的な判断に依存しない指導が可能になるはずです。測定評価は、実践的実用科学なのです。


2.複雑な身体情報と測定評価
 競技力(成果・成績・記録)は、体力・体格・精神力・判断力・コンディション・適応能力・技術・戦術などの要素が相乗的に作用して向上していくものです。しばしば競技者の評価において、体力の増減だけを分析して、成績向上の要因は何か、成績不振は体力のどこに原因があるのかを追求しているケースをみかけます。確かに競技者の体力は、競技成績を左右する重要な要素であることはいうまでもありません。しかし、図に示したように、競技成績は体力一要因だけで決定づけられるほど単純なものではありません。体力要因を向上させるためには、身体組成の改善は不可欠となります。体力要因が向上すると、それに伴い運動能力の質的変化が期待できます。また、体力、運動能力、身体組成に多大な影響をもたらすサポート要因には、トレーニングサポート、メディカルサポート、心理学的サポート、栄養学的サポートなどがあります。

 
 
このように、競技成績は各要因が複雑に関連して生じるため、一要因だけを分析して評価を導き出すのはたいへん危険なことなのです。測定評価は、これら複数の要因について統計手法を用いて分析し、成績に影響を与えた要因は何であるか、トレーニングが成績に反映しなかった原因はどこにあるのかを導きだす有効な手段なのです。測定評価は、複雑な身体情報を解明することができるのです。

3.測定評価の正しい活用
 近年コンピュータの急速な普及に伴い、測定評価に用いる統計ソフトが誰にでも手軽に入手できるようになりました。極端に言えば、統計理論を学んだことのない人にでもマニュアルに従えば統計値を得ることが可能となりました。しかし、用いた統計手法のもつ意味、得られた統計値の示す意味を知らずして数値を鵜呑みにし、単純に成績が向上したとか効果が得られなかったと分析している誤ったケースをよく見かけます。統計手法の意味、統計値の持つ意味を知って分析・評価を行わないとたいへんな間違いを犯すことになります。一競技者の選手生命を脅かすことにも繋がりかねません。目的、意味を理解せずに「統計遊び」を行い、「数値に酔いしれる」測定評価まがいの分析は絶対に避けるべきです。指導者が、競技者の成績管理や継続的な体力管理を行う場合には、統計の基本を理解しておくことが必要です。コンピュータを活用し正しい統計分析が自在にできるようになることで、今まで見えてこなかった競技者の改善すべき問題点が明らかになってくるはずです。

 統計は、様々な手法があります。どの手法を用いて分析したらよいかは、専門家の指導を仰ぐことが賢明でしょう。あるいは、専門家との協力体制を整え、競技力向上を目指して取り組むことにより、的確な測定評価が可能となり、指導の成果をあげる近道となるでしょう。

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