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 スポーツ医科学レポート NO.13-5

5.現場における医科学サポート活動

ドーピングコントロール
川口 純子
(岐阜県スポーツ科学トレーニングセンター)

 
 
現在私は、選手個人やチーム全体に対して体力トレーニング指導と体調管理を中心としたサポートを行っています。その中には最近話題になっているドーピングコントロールも一部含まれます。
 今回は海外で経験したドーピングコントロールなどコンディショニングサポートについて報告します。 
 【メディカルミーティング】
 大会前に現地でメディカルミーティングが開かれます。参加者はスポーツドクター、フィジオ、トレーナーです、ここでは大会期間中の医療体制やドーピングコントロールの詳細(対象選手の選考方法、内容など)について説明を受けます。普通、ドーピングコントロールは試合後に実施されますが、ホテルで抜き打ちのドーピングコントロールを経験したこともあります。
 
 【試合後のドーピングコントロール】
 ドーピングコントロールの連絡は試合直前、試合中あるいは試合直後に入ります。対象となった選手は大抵フィジオやトレーナーと一緒に指定された場所に行きます。ドーピングコントロールは尿検査によって行われますが、尿の採取には立会人がいるため、初めての選手は恥ずかしさと緊張でなかなか尿の採取ができません。ここでのサポートは、ドーピングコントロールがスムーズに進められるように現地の医療スタッフと選手との調整役と選手の緊張をほぐす事に尽きます。選手は指定量の尿が採取できるまで、たとえ気晴らしといえども部屋から出る事は許されません。選手の中には4L以上の水分を採っても1時間近く尿が全くでないという事もありました。
 上記以外にドーピングに関連するサポートとしては、常備薬やサプリメントのチェックと管理が重要です。特にドクターが帯同していない時の病人に対する対処方法は重要で、トレーナー自身が慌てないようにしておく必要があります。薬剤などの本部への申告方法などもあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
 その他海外では時差、寒暖の差など環境の変化や言語、食事、精神的ストレスなど課題は多くあります。それぞれの対処はその都度臨機応変に行動することです。
 次に国内外問わず共通するサポートについて具体的な方法を紹介します。


 【サポート内容】
1)現地の情報収集
 トレーナーは現地での活動がスムーズに実施できるようあらゆる情報を収集しておきます。気温、湿度から飲料水、補食、氷、救急用品の確保できる店など考えられることなら何でもです。今ではインターネットでかなりの情報が収集できます。これらの情報を基に事前準備するものと現地調達するものを決めます。
 数回あるいは数年にわたってサポートする場合は準備品などのリストを作成しておき、その都度見直します。
2)暑さ・寒さ対策、空調
 暑さに対しては、体力消耗を避ける配慮です。練習会場では直射日光を浴びないようにする、水分摂取を促す、身体を冷やすなどがあげられます。選手は暑さ対策の必要性を理解していても試合ともなれば、試合の事で頭が一杯です。サポートはタイミング良くアドバイスすることと必要なものを即座に出せることです。
 寒さ対策では体温、筋温低下の抑制です。身体が冷え切ってしまうと折角のウォーミングアップも台無しです。首や肩、膝など関節周辺の保温に努め、試合直前までのネックウォーマー着用やカイロなどを関節周辺に貼付するのも良いでしょう。その他合宿や遠征では、うがいの励行と宿舎の空調への配慮も重要です。ホテルなどは空調が行き届いている反面、室内が乾燥し過ぎていることが多いように感じます。この場合、部屋の空調機の近くに濡れタオルを吊るしたり、コップ1杯の水を室内に置きます。夏期など冷房が強い場合、宿舎内で靴下の着用を促し、薄着への注意を徹底するなど身近なことから始めます。
3)水の確保
 海外では大会ともなると大抵飲料水のサービスを受けられます。問題はその水が衛生的であるかどうかです。会場によってはタンクごと用意されるますが、これは使用しません。地域によっては水道水をそのままタンクにいれるからです。国内も同様で、飲み水や氷への配慮は大切です。選手の中には飲み水が変わるだけで下痢を起こす事もあります。国内外問わず、遠征ではストレスも加わり、胃腸が弱りやすいものです。長期にわたる遠征の場合は食事面への配慮も必要となります。
4)体調管理
 私は、遠征ごとに『コンディショニングチェックシート』を作成します。シートには、遠征中の行事をあらかじめ記入し、予定がわかるようにします。チェック項目は、起床時体重、便通の有無、体調評価(主観的に5段階評価)です。毎朝、選手が上記の項目に記入した後、私は選手から直接シートを受け取ります、この時、私自身も選手の顔色や様子をチェックします。この方法は大勢の選手の体調を管理する場合に有効です。このシートをまとめておけば、体調変化の傾向も把握できます。
5)身体のケア(アイシング、テーピング、マッサージなど)
 アイシングは練習時、試合時などいつでも使用できるように準備しておきます。アイスパックがない場合は食品の保冷剤を代用します。また、氷さえあれば小さな袋につめて使用することもあります。アイスパックを身体に固定する場合もバンテージや台所用のラップを使用します。このように身近にあるものを工夫して使います。宿舎では、フィジオと一緒に選手のケアを行います。私の部屋を選手に開放し、室内にテーピング用テープを並べ、いつでも対応できるようにしながらアイシング、応急処置、身体のケアを行います。

【トータルサポートを目指して】
 以上が私の行っているサポートの一部です。実際にはもっと多くの内容があります。サポートは何でもあれば良いというものではないと考えています。必要なサポートを必要な時にする事が大切です。必要なサポートは。指導者の意向を理解した上で、サポートにかかる経費、サポートスタッフの人数と役割、サポートの場所なども考えて決めます。
 コンディショニングサポートはトレーニングのサポートとは異なりますが、選手がトレーニングで高めた体力や技術を試合で最大に発揮するという一連のサポートとして考えれば切り離せません。また、いくつかのサポートを行った場合、例え一つのサポートが上手くいったとしても他のサポートが上手くいかなければ決して成功とは言えません。選手やチームのサポートはこれからますます盛んになるでしょう。これからのサポートは全体で考え、トータルにサポートする必要があります。

 今回の報告ではドーピングコントロールを含め私の実施しているサポートの一部を紹介しました。サポートを考える指導者やトレーナー自身が普段取り組んでいるコンディショニングの参考になれば何よりです。


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