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 スポーツ医科学レポート NO.13-1

1.手の障害その2

たかが突き指、されど
横井 達夫
(岐阜県立病院整形外科)


 
突き指は、スポーツ活動のみならず、日常よくある外傷です。とくにバレー、バスケットなどの球技においては頻度がさらに高いものと思われます。多くは本人、チームメイト、コーチが軸方向へ牽引し、シップ、テーピングなどで早々に復帰していることでしょう。しかし、一口に突き指と言っても、中には骨折、脱臼を伴い、不適当な治療は後遺症を残すおそれがある損傷も含まれています。後遺症を残し、動きの制限された指がありますと、握力の低下、手全体の機能障害をきたし、運動能力の低下にもつながりかねません。本稿は注意が必要な手、指スポーツ外傷について突き指を中心に述べたいと思います。

【側副靭帯損傷】
 指の関節の両側にある靭帯ですが、脱臼にともなって断裂することがあります。多くの場合、固定とかテーピングで治療できますが、動かすと再脱臼する場合、屈曲、伸展以外の方向へ容易に向いてしまう場合は手術が必要なことがあります。特に母指のMP関節の尺側(小指側)側副靭帯損傷は、競技中の突き指、スキーの転倒で受傷し、断裂した靭帯間が反転転位しやすく、固定だけでは不安定を残すことが知られています。この関節に不安定を残しますと、つまむ力、握力の低下を残します。

【槌 指】
 伸筋腱付着部での損傷で、DIP関節が伸展できなくなる状態です。野球の捕球の際、利き手側に受傷することがあります。骨折を伴う場合と、腱損傷のみの場合があります。放置しますと、改善することはなく、DIP関節屈曲位PIP関節過伸展位という変形(スワンネック変形)を残します。

PIP関節脱臼骨折】
 背側に脱臼する場合と掌側に脱臼する場合があります。牽引によりとりあえず整復されますが、固定位が不適当だったり、あるいは手術により骨折を固定しないと再脱臼してしまいます。また関節内の骨折はできるだけもとの位置に整復しないと、可動域制限、運動時痛を残すことになります。骨折から時間を経過し陳旧化するとさらに治療は困難になります。手術のほかに、指に機械をつけて、持続的に牽引して治療する方法もあります。

【母指MP関節背側脱臼】
 通常、突き指は軸方向に牽引しますが、この脱臼は解剖学的特長より牽引では整復されません。また母指はあきらかにはずれているという形態をとらず、過伸展位で屈曲できないというロッキングの症状となります。手術が必要なケースもありますので、専門医の診察が必要になります。

母指CM関節脱臼骨折】
 母指の付け根、手関節に近い部位の脱臼骨折です。整復は牽引でできますが、手術による骨折の固定をしないと、再脱臼を起こすことが多くあります。

 5本の手指のなかに、十分動かない指が一つあると他の指も、握りこめない、伸びきらないという症状が残ります。これは指を動かす筋腱が完全には独立していないためですが、罹患肢の握力低下をきたすだけではありません。踏ん張らなければならない時に握りこめないことが、競技力の妨げとなることも考えられます。たかが突き指と軽く流さず、中には専門医が必要な場合があることを心にとめていただきたいと思います。特に、自分で曲げられない、伸ばせない時、容易に別方向に曲がってしまう時、牽引しても変形が残る時は要注意で、レントゲンによる検査が必要です。

※文中略称
 DIP関節:遠位指節関節 通称第1関節
 PIP関節:近位指節関節 通称第2関節
 MP関節 :中手指節関節
 CM関節 :手根指節関節


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