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スポーツ医科学レポート NO.12

4.理学療法士の立場でのサポート活動

    木村 信博
(県立多治見病院)

 一般的に理学療法士はスポーツ外傷後のリハビリテーションを通じてスポーツ医科学サポートに関わっています。「骨折」、「脱臼」、「靭帯損傷」などの急性外傷から「野球肘」、「ランナー膝」、「シンスプリント」などの慢性障害と疾患は様々ですが、現状の問題点を検索し、より効果的な治療を心掛けています。手術が適応となるようなスポーツ外傷では、術前より可能なトレーニングを開始し術後よりも早期からリハビリテーションを開始することにより逸早いスポーツへの復帰を目指します。炎症を起こしている組織や損傷を受けた組織を安全に修復させるためには患部の安静を保たなければなりませんが、安静を保ち固定することで関節は硬直し、筋肉は痩せてしまいます。患部を長く固定すれば損傷を受けた組織は丈夫になりますが、周囲の関節や筋肉、反対側のそれらのパフォーマンスは必要以上に低下してしまいます。よって患部以外は早期から運動を開始すること、患部でも外傷に影響しない運動は極力早期から開始することが大切です。以上のようにスポーツ外傷後のリハビリテーションは安静(固定)と運動という相反する要素の両立を目指しますが、スポーツ現場におけるコンディショニングにおいても同様であるといえます。
 例えば、選手が「膝が痛む」と訴えた場合、練習を中断することで安静が保たれ患部の炎症は軽減し痛みは治まりますが、運動を続ければ患部の炎症は改善されず痛みが消えることはありまえません。練習を続けて痛みが改善する方法は無いのでしょうか?このようなコンディショニング不良では、スポーツ外傷後のリハビリテーションと同様に患部の安静と運動を両立させればよいのですが、再発予防のためにも痛みが起こった幾つかの原因を検索することが重要です。疼痛の種類、程度、関節の可動範囲と安定性、靭帯の強度、筋力、身体のアライメントなどを、正常な状態もしくは左右差と比較、評価することで疼痛の原因を明らかに出来れば、どの方向の固定が必要で、どんな運動が可能かは比較的簡単に診つけられるものなのです。そればかりか、これらの疼痛がスポーツ外傷の発症に関わる因子であるのならばケガ自体を予防することが可能となります。但し、スポーツ外傷の原因には上記のような解剖学的な固体に関わる内的因子ばかりでなく、天候やグランドコンディションといった外的なものも関わってきますので、これらの評価も怠ってはいけません。
 理学療法士は医療機関内での受動的な医科学サポート、体調不良を訴えどうしようもなくなった状態もしくはスポーツ外傷が起こってしまってから競技復帰前までのサポートの機会が多いことは事実ですが、スポーツ現場に出てしまえばリハビリテーションの領域のみならずコンディショニングの領域においても活動できるだけのknow-howは備えています。何故なら先から記している通りリハビリテーションもコンディショニングもそのメソッドに何等代りが無いからです。
 スポーツ現場での医科学サポートとしてスポーツ外傷に対するアプローチがありますが、今後、更に多くの理学療法士がスポーツ現場に密着した医科学サポートに関わることでリハビリテーションに至る前のコンディショニングレベルでスポーツ外傷の発症自体をコントロール出来るようなサポートや、スポーツ外傷後のリハビリテーションから現場でのコンディショニングまで一貫したサポート体制が幅広い分野において可能になるのではと考えます。
 良い選手、力のある選手にケガはツキモノ、多少の不調も「大丈夫」という本人の言葉を信じて常に戦力として頼りたいもの。目先の成績にこだわるあまりに結果的に戦力down、選手生命も縮まるといった悲劇も少なくないはずです。しかしそろそろ医科学的管理の下、ケガをしてから、もしくは体調を崩してからの医科学サポートではなく、ケガをしないための、コンディショニングを崩さないための医科学サポートに目を向けなければならない時期なのではないかと思います。根拠の無いコンディショニング、対処療法的なサポートからの脱却のために、選手が不調を訴える前から解剖学的身体評価や運動学的パフォーマンスの評価などを、より多くの専門知識豊富な理学療法士が評価・分析することで、スポーツ外傷後のコンディショニングは勿論のこと、コンディションを保つためのよりプログレッシブなスポーツ現場での医科学サポートが可能になることに期待を寄せています。

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