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スポーツ医科学レポートNO.10


6.スポーツ医科学に期待するもの
〜フェンシングを指導する者の立場から〜


新井 祐子
(朝日大学経営学部)


 私はフェンシングを高校入学時から13年間プレイしてきました。現在も選手としてプレイする傍ら、昨年4月からは指導者としての道も歩み始めたところです。過去にも、高校生や大学の後輩を指導する機会もありましたが、その際の視点は選手の立場から見た指導に留まっていたような気がします。
 ここで経験を含めて、現役プレイヤーそして新米指導者の立場からスポーツ医科学に望むことを述べさせていただきます。
 私自身、スポーツ医科学に対する認識が乏しく、指導者を志すようになってようやくスポーツ医科学に目を向け始めました。しかし、フェンシングに関するスポーツ医科学面の指導書・トレーニング理論などの書籍は少なく、情報の収集が困難な状況です。また、フェンシングは他の競技に比べてスポーツ医科学を十分に活用できていないようにも思います。実際のところ、フェンシングの練習は指導者による技術指導が多く取り入れられています。本来、スポーツの観点からすれば基礎体力、筋力そして持久力などについても十分なトレーニングが必要になるはずです。指導者はもとよりプレイヤーは技術以外のトレーニングの必要性を理解することがとても重要だと考えます。スポーツ医科学に対する認識がなかった頃の体験の一つですが、ある体力測定の結果「前回より体力の向上が認められた」と知らされた時、「もっとトレーニングをして体力をつけよう」という意欲が湧いてきました。今までは、練習してきた成果を表すものは試合結果だけだと思っていましたが、それが違う形(数値)で表されても意欲に結びつくことを知ったのです。
 このように、スポーツ医科学に関する情報提供やその勉強会およびさまざまな測定が行われるようになれば、指導者もプレイヤーもスポーツ医科学の必要性を感じるのではないかと思います。最初の要望は、このような機会を多く提供していただくことです。
 次に、フェンシングの競技力向上を目指すスポーツ医科学のサポートに関しての具体的な要望です。フェンシングのプレースタイルから、上肢や大腿部の筋肉の発達の様子が左右で異なります。特に、下腿の筋肉の発達部分に関しては周径囲が変わらなくても異なります(前足は前脛骨筋が発達し後ろ足は腓腹筋が発達している)。このようなフェンシングの競技特性による必要な筋肉およびそのトレーニング方法についての多くの調査・研究がなされ、適切なトレーニング方法を見つけて頂きたいと思います。
 また、フェンシング競技は、相手の動きを予測して攻撃を仕掛けるタイミングや、予測できなかった時の対応など瞬時の判断力が欠かせません。しかし、反復練習のような積み重ねによる技術の向上とは違い、瞬時の反応や対応といったものはそう容易く養われるものではないので、判断力を高めるための科学的なトレーニング方法も知りたいことの一つです。
 さらに、栄養補給やメンタルトレーニングが近年のスポーツにおいて重要視されていますが、フェンシングの試合においてはそれほど活用されていないように思います。フェンシングの試合形態は大会規模や団体戦・個人戦によって異なり、試合が1日がかりの時など適度な栄養補給をしながらプレイしなければなりません。しかしながら、緊張のあまり食欲がなく栄養補給なしで試合をする選手をしばしば見かけます。このように、長時間にわたって行われる試合での栄養や水分の補給に関する知識が必要です。同時に、このような場合の緊張をほぐす方法や、試合の中での気持ちの持ち方などのメンタルトレーニングについても医科学的な立場からアドバイスを頂きたいと思います。
 以上、一指導者としてさまざまな分野の方々の指導法や情報提供を望んでいます。そして、それを私自身が理解しフェンシング関係者として理論から実戦への橋渡しの努力をしなければならいということも実感しました。また、私のみならず岐阜県のフェンシング界もスポーツ医科学関係者と密接な関係を持つことが、さらなる競技力の向上に役立てられると信じています。最後になりますが、今回このような執筆を依頼され、選手として、また、指導者としてこれからいろいろな強化方法を考える機会を与えて頂きましたことを感謝いたします。