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スポーツ医科学レポートNO.10


4.サプリメントの活用方法


早川麻理子・松岡敏男
(岐阜大学医学部)


 人間は日常生活を行うだけでも様々な栄養を摂取しなければなりません。よって主なエネルギー源となる炭水化物、脂質、タンパク質の三大栄養素や、その代謝を助けるビタミン、電解質やミネラル、微量元素、水などのバランスの良い栄養摂取は体づくりの基本と言えます。特にスポーツを行う時には、日常生活で消費されるエネルギー量(kcal)に加え、さらに多くのエネルギーが消費され、スポーツ選手の体は、日常生活以上に、筋肉を動かすための燃料として炭水化物、脂質、タンパク質を必要とし、燃えやすくするための着火剤や潤滑油として多くのビタミン、電解質やミネラル、微量元素、水などの要求が高まります。よってスポーツ選手はより多くの栄養を必要とし、体力の維持、向上にはバランスのとれた栄養補給が最も重要となります。そして不足した栄養素はまたは意図的に摂取を増加させたい栄養素が"サプリメント"であり、必要な時に必要な量を補うこと"タイミングと量の補給"が適切なサプリメントの活用であると考えます。また、競技に適した体づくりのために減量したり体脂肪を減らす時には、特定の栄養素欠乏が予測され、サプリメントの活用は必須となります。
 そこで今回は、運動前、運動中、運動後に必要と考えられる主なサプリメント:エネルギー補給、たんぱく補給、水分と電解質の補給、ビタミン補給について述べます。

1.貯蔵エネルギーとなるサプリメント:炭水化物の補給
 運動時にはエネルギーとして炭水化物、脂質が主な燃料となります。運動強度が高まるほど、筋グリコーゲンは筋収縮のために炭水化物を必要なエネルギーとして利用、分解しますので、運動前には、米、スパゲッティやジャガイモなどを摂取し十分な筋グリコーゲンの備蓄が必要となります。運動直前、運動中に食物繊維を多く含む炭水化物の摂取は胃腸障害を引き起こす可能性があり、運動直前、運動中は食物繊維の少ない消化態の炭水化物を、サプリメントまたは5-10%の糖を含むスポーツ飲料で1時間に30-60g補給すると良いでしょう。そして、運動直後は最もグリコーゲンの貯蔵率が高くなるため、運動直後15分以内に吸収の良いサプリメントで50gの糖質を摂取し、筋肉を分解しエネルギーとして消費させることを抑えるためにも吸収しやすい形の炭水化物を摂取させることが望まれます。減量を行う場合は、脂肪摂取を下げ、炭水化物の摂取は必要量摂取します。
2.筋たんぱく質の合成と修復サプリメント:たんぱく質の補給
 筋肉の回復とは、運動によって生じた身体の異常を正常な状態に戻すために運動後に生じる生理学的過程であり、24時間から48時間を要すると言われています。運動直後、炭水化物と合わせてサプリメントで10-40g摂取し、その後24時間以内に1-2g/kg(体重)摂取が望まれますが、通常の食事で2/3を摂取し、食事の間にサプリメントで1/3を摂取しても良いでしょう。
3.代謝を助けるサプリメント
1)ビタミンの補給
 体内においてビタミンは、補酵素、ホルモン、抗酸化物質として働き、エネルギー産生と筋組織および赤血球の形成を行います。スポーツ選手においては、運動により代謝が亢進するため大部分のビタミン需要は増加します。運動による疲労に対するビタミン補給ではビタミンB1が有効であり、エネルギーの産生と筋運動による消費ではビタミンB群の必要が増加し、水溶性ビタミンであるB群、Cは発汗により損失する可能性もあります。
 また、運動によるストレスや筋組織の損傷に伴う炎症からフリーラジカルが大量放出するため、抗酸化ビタミンとしてE400-800mg、C300-1000mgの摂取を薦めます。よってビタミンは、食事のみでの摂取量では不足が考えられ、サプリメントの摂取は総合ビタミンおよびビタミンC、Eを薦めます。
2)水・電解質の補給
 人体の約60%は水であり、体脂肪には10-15%の水分は含まれているだけなので、体脂肪の少ないスポーツ選手においては水分の占める割合が比較的多いと言われています。発汗による電解質の損失と脱水症を防ぐための補給溶液は、できるだけ低張330mOsm以下(等張:ヒトの細胞外液は約300mOsm)にし、例えば、運動中は15分毎に約4-10℃のスポーツ飲料を150ml(1時間600ml)摂取し、運動後には体重減少1kgにつき約14-22℃のスポーツ飲料を1300-1600ml補給します。競技の種類や年齢性別、体格や体質により異なりますので調整が必要です。
3)不足しがちなミネラルの補給
 成人のスポーツ選手で1日のカルシウム摂取量は1000-1200mgが望ましく、乳製品が嫌い、もしくは乳糖不耐症(牛乳を飲んで下痢を起こす)場合には、サプリメントで摂取します。また、通常の食事では1000mgの摂取は困難であり、600mgはサプリメントでの摂取を薦めます。鉄の補給は鉄過剰による危険性もあるため、サプリメントとして鉄を摂取する場合は専門家に相談した方が良いでしょう。